OTF 公開停止

LaTeX ユーザにとってたいへん残念なことになった。

奥村先生の TeX Forum から来る投稿記事メールは最近ほとんど読み飛ばし状態だった。しかし,つい先ほど受信したメールのサブジェクト: "「何々prop」のみならず「OTFパッケージ」も公開停止に" があまりに衝撃的だったので,作者・齋藤修三郎氏のサイトを確認してみた。果たして「暫く旅に出ます。探さないで下さい」との悲しい文言が... OTF 公開停止は事実のようである。OTF パッケージは,LaTeX 和文タイプセットにおいて出力漢字を拡張するために,なくてはならぬ存在なのに。

どうして齋藤氏は公開停止を決断なさったのか? この悲しい文言から,なにか,相当に深い事情がありそうなので,それを詮索してもはじまらない。まずは齋藤氏の意思を尊重すべきだろう。フリーソフトウェアの開発・公開・メンテナンスは,作者の思いとユーザの使い方・要望がすれ違うと,ちょっとした要因でこれが作者にとってバカバカしくもなる。そんな作者の心情は,misima を公開している私にもよくわかる(もちろん,齋藤氏には私なんかよりずっと高度な事情があるに違いないのだけど)。自分自身にとってすでに終わった課題解決を,さらに一歩踏み出して公開し他人に供するのは,親切心以上のなにものでもないからである。

OTF 公開停止は pLaTeX2e ユーザにとって一大事件である。私は OTF パッケージを,安定版も開発版もすでに入手しているため,個人的には困ることはない。けれども,これから LaTeX をはじめる人はどうすればよいのか。その人に「こんな素晴らしいパッケージがあるよ」とお勧めすることもできなくなった。私の Web ページでも OTF パッケージを大いに宣伝している。書き直さないといけないのだろうか。OTF を前提とした拙作ツール Utf82TeX も,これにていよいよご臨終というわけか。私もしばらく旅に出たくなってしまった...

さしあたり,様子をみるしかなさそうである。

※ 2010.4.12 付記
OTF パッケージはその後ほどなくして,再公開されるようになった。おまけに,Beta 版 で JIS 2004 対応,ぶら下げ組みオプションという機能追加をしてくれている。よかったよかった。

※ 2010.4.16 付記
misima はその後ほどなくして,非公開になった。友人にだけ限定公開。作者は「なんちゃって旧字旧仮名遣い派」の増殖に加担するのが厭になった次第である。よかったよかった。