沖縄県名護市長選で基地移設反対派の稲嶺さんが当選した。これで普天間の移設が「民意」によって否定されたとしてかつての日米合意の履行が事実上不可能となりつつあり,日米関係がいよいよ危機的状況になった — マスコミの論調はこのようなものである(例えばここ。時事通信だけでなく,読売新聞も米紙報道を伝えていた)。平野官房長官はそれでもゼロベースで検討する,と「それはそれ,これはこれ」テキ発言をしてケムに撒くようなところがあり,この問題に対する政府の動きがなんとも煮え切らないように映る。
でも,たかだか普天間の移設問題で日米関係に亀裂が生じると米国が本当に考えているのか,そもそもそのあたりから私はよく理解できておらず,この政府の煮え切らなさはただそれだけの話 — 明確にしなくてもなんの実害もないという考えの現われ — のような気もする。米国は「思いやり予算」さえきちんと確保すれば一言も文句を言わないのではないかと。だって,沖縄の基地の意味は米国にとっても日本にとってもいまやゼロだからである。米国はいまや経済的にも,環境問題でも中国と協調せざるをえないのだ。鳩山さんもそのへんよく分っていて,多分,この件については参議院選挙への影響しか頭にないと私は思う。だから「つまらない話だけど,選挙の争点にしたくないし,5 月には収束させなくちゃ」くらいの感覚ではないのか。
面白いのは,普天間移設日米合意をこじらせるに決まっている反対派市長の当選に,民主党が肩入れしたところである。民主党はわざと「日米関係の危機」でマスコミを煽っているとしか思われない。鳩山さんは 5 月までに結論を出すと明言している。橋下知事の提案どおり関空にもってけー。涼しい顔で「また先送り」という「結論」を出して,大笑いさせてくれることを,じつは私は期待しているんである。ほかにもっと大事なことがあると思うから。
今日は神奈川県立高校入学試験前期の初日であった。ウチの娘も第一志望の高校で小論文を書いて帰って来た。昨夜は緊張して眠れなかったらしい。私が朝 5 時まで仕事をしていたのを知っていた。「お父さんみたくインソムニアだったわけよ」。そのわりに練習のとき以上に落ち着いてスラスラ書けて,余裕だったらしい。
どんなに広く漠然としたテーマでもまずはじめに自分がどのようにテーマを捉えるかを明確にしろ,それに続いてすぐ結論を簡潔に書け。本論ではその理由と例を述べよ,その際,必ず自分の身近な経験・具体的な出来事とその考察から論を展開しろ。序破急の三段構成で書け,起承転結は飛躍に走るので絶対にやめろ。結論部には纏めとともに今後の行動の課題・意志を書け,などなど,私も自分なりに少しは指導した。
テーマは自然と人間について 600 字以内で考えを書け,というものだったそうである。例年,その高校は「次の三種類の椅子の写真を見て考えるところを述べよ」風の奇矯なテーマで書かせることで知られていた。今年はしごく「自然な」ものだったらしい。娘は百人一首の引用から説き起こして,自然と文化との関わりについて書いたという。娘は百人一首を丸暗記していて,得意分野に話を繋げたわけである。その論を読んだわけでもないのに,なかなか大した奴だと私は少し親バカになった。でも百人一首への娘の取組みは,古典文学への関心ゆえではさらさらなく,なにより学校での歌留多取り大会でトップに立つためである。ウチの中学では絶対負けないと自負している。やっぱり体育会系なんである。