W 杯出場国決定

サッカー W 杯 2010 年南アフリカ大会出場国・32 チームが出そろった。スペイン,オランダ,イングランドなど当然のごとく予選を突破した国もあれば,フランス,ポルトガル,アルゼンチンは思わぬ苦戦の末に切符を手に入れた。ヒディング監督率いる話題のロシアは切れ味するどい攻撃が印象的だったが,ここいちばんの踏ん張りが足りず,敗退した。南米・ヨーロッパ予選の過酷さが伺い知れた。これを見ると,最速で出場を決めた日本が子供のように映り,最速でグループリーグ敗退に終わるのはやむを得ないと思わずにはおれない。

フランスとアイルランドの決戦は凄まじかった。仏のティエリ・アンリ選手のハンド問題でいま大騒ぎである。「誤審」も試合の流れ・運のうちなのだから,まあしようがない。ところで,この問題について,当のアンリ選手自身がハンドを認め再試合がフェアだとの見解を述べているとニュースで読んで,この誤審そのものにまさる驚きを私は覚えた。私は,こういうとき日本の選手ならどうコメントするだろうか,とすぐ考えてしまう。日本人選手なら,「ハンドがあったかどうかは,激しいプレーの最中のことなので記憶にない。審判の判定なのだから,それも勝負のうち」と言うのではないか。私なら,そう取り繕うだろう。発言いかんによってはせっかく手に入れたチケットがふいになってしまうことを怖れるだろう。このアンリ選手の,バカ正直とすら思われる,恐るべきフェア・スポーツマンシップに感嘆させられてしまった。スポーツは何よりもまずフェアであるべきという信念が,政治的な圧力によって曇らされることのない人物像。アンリ選手の発言には,その姿がきりりと鮮やかである。W 杯前回大会でのジダンの頭突き問題でのジダンその人の釈明にも感銘を受けたが,欧州強豪国の代表選手という者たちが精神的にも国の良識を代表する強者だと身にしみるのである。やはりフランスは一流の国なのだと印象づけられるのである。

守備にミスの多い日本チームは,W 杯ではまずひとつも勝てないだろうと思う。「ベストフォー」などといった夢物語ではなく,グループリーグ 3 試合の無失点ドローをこそ目標にすべきなのだ。グループリーグの組み合わせが決まったら,対戦チームの研究に心血を注ぐ。その分析に基づいた練習を徹底する。もちろん,岡田監督はそんな弱気に見える目標をことばにすると,いよいよ惨めだから決して言わない,そういう事情もよくわかる。でも,アンリやジダンに透徹した「国の代表」としてのメンタリティを見せつけられた時点で,日本のベストフォーなんて子供のないものねだりだということがあまりに明白で,悲しすぎるんである。それでも,この誉れある舞台で日本人選手がどんな活躍をみせてくれるのか,いまから本当に楽しみである。