選挙・川村湊『狼疾正伝』

選挙の投票に行って来た。川崎市長及び参議院神奈川県補欠選挙である。民主党が勝つんだろうな。幸福実現党が性懲りも無く候補を出していた。

それにしても,思うに,自民党はもはや過去の政党に成り果ててしまったようで,無惨である。野に下った「保守」政党としての自民党に,いまやどんな役割があるのかまったくわからなくなってしまった。民主党自体,保守的な政党だからである。だから農協やら医師会やらが平然と民主党支持に鞍替えできるのである。自民党の行く道はだだのひとつ。極右政党に成り下がることだろう。「保守」ではなく「右翼」になること。「利権」を喪失したいまや,靖國万歳,特亜殲滅,アジア蔑視の排外主義などなど,これまで隠然とやっていた「美しい日本」主義を大っぴらに主張しはじめるしか生きる道がなさそうである。

ロシアの政党に Либерально-Демократическая Партия России がある。つまり「ロシア自由民主党」。ソ連崩壊とともにできた極右民族主義政党である。「北海道はロシアの固有の領土だ」と主張するロシアの反日勢力である。旧態権力の生まれ変わりにして極右勢力という意味で,日本の自民党も同じ道を行く暗合のように私には思われる。名は体を表す,という。自由をも,民主主義をも認めないという意味で,「自由民主党」という党名は,名は体を表す。

石破茂や野中広務など,自民党にもホネのある良識派がいる・いたんだけどな。

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妻の誕生日プレゼントに川村湊の著した『狼疾正伝』(河出書房新社,2009 年)を注文した。今年生誕 100 周年を迎える中島敦の評伝である。妻は中島敦のファンなのである。

中島敦は昭和十七年に 33 歳の若さで逝った才能である。その漢文調の語り口は硬質,端正にして,格調高雅,意趣卓逸の気風に充ちている。近代人特有の知的憂悶を表現した文人作家を,中島敦,森鷗外,石川淳を措いて私は知らない。

誰もが高校の教科書で中島敦の『山月記』を読んだことがあるだろう。才能に恵まれた者が,その「臆病な自尊心と,尊大な羞恥心」の相克の果てに人間性を喪失し,虎と化す。虎は生存競争を強いられた暴力の象徴である。私はこの作品を改めて読み,まるで志高い高学歴の若者がワーキングプアに苦しむ様を見たような気がする。ワーキングプア問題があげつらわれる背景で話題になった小林多喜二『蟹工船』なんかよりも,この僅か 9 頁の作品のほうがよっぽど現代の若者の内向する苦悶を表現しているように私は思うのである。