今日,娘と高校の学校説明会に行って来た。JR 南武線・宿河原駅近くの高校である。川崎市の県立高校のなかでも古い名門であり,広い敷地に校舎がすべて二階層以下という贅沢な環境。裏手には多摩川の河川敷。大きな銀杏並木の接する広いグラウンドではサッカー部員が練習していた。旧き良き高等学校。校舎は老朽化が進み,校内の大きな庭は荒れ(整備の予算が付かないのだろう),寂れた印象が強かった。
学校の歴史・校風,進学実績,考査方法の方針などの先生の話は,私には「ふぅん」で終わった。それよりもなによりも,吹奏楽部が素晴らしい演奏を披露してくれた。司会の放送部女生徒の話す日本語が,明らかに放送向け発音訓練によって鍛え抜かれていて,端正この上なかった。びっくりした。おお,昔の NHK 女性アナウンサーはこんなしゃべり方をしたぞ。高校のクラブ活動では基本が徹底されていて,もはや大人にも侮れない。説明会のあと校内を少しぶらついた。女生徒のトランペット練習の音にいい知れぬ郷愁を覚えた。先生の話はそっちのけで,こういうことばかりに感心して帰って来た。
ロシアのヴラジヴォストークで,日本製中古車販売に高関税を課しいずれこれを禁止するというロシア政府の政策に対し,中古車販売業者を中心とした反政府デモがあった。今日テレビのニュースで,その様子を見た。ケンカの強そうないかにものロシア人が「プーチンに死を」なんて過激なシュプレヒコールをしていた。
ロシアのこの政策は,日本車によって国内の自動車産業がホネヌキになっていることを受けており,国内産業保護の観点に立った,いわゆる保護貿易主義の現われである。日本政府がこのロシアの政策に今後どう対応するか注目される。とはいえ,昨年来の金融不況のおかげで,最近,世界的に保護貿易主義的話題が目立つ。ロシアに限らないのである。つい先日も,米国が中国製タイヤへの 35% の高い追加関税措置に踏み切り,中国から保護主義だと批判されている。これは,かつての日本バッシングを今度は中国製品に対して大々的にやりはじめたという徴候だと思う。米中は今後厳しく対立するように思われる。日本と違い中国は「ハイそうですか」と唯々諾々と米国に頭を垂れる国ではない。保護主義は相手国から対抗策をお見舞いされる。その連鎖が起きると両国の関係が見る見る悪化する。ミサイルを配備したというような安全保障危機意識よりも,産業,ひいては生活に直結するだけに,ある意味で対外的国民感情を左右しやすい。
また同じニュース番組によれば,鳩山首相が ASEAN 首脳会議で「東アジア共同体構想」を各国首脳に呼びかけたという。これは地域経済ブロック圏の確立への提案と考えられる。欧米の保護主義に対抗するための,中国と日本を中心とした経済ブロック圏構想。岡田外相が米国を参加させない,と言っているのが印象的である。
経済不況,保護貿易,ブロック経済圏と来ると,第二次世界大戦前夜の帝国主義諸国による覇権争いに酷似して来たと思わないではいられない。こんな提案が日本から出るのは,自民党政権による長い対米従属政策に慣らされた者には信じられない。普天間の問題よりも私はこちらのほうが心配である。もしかすると,上海条約機構のような軍事同盟にも,そのうち日本が絡んで来るのではと思ってしまう。冷戦構造を前提とした日米同盟がいま揺らぎかけているのではないかという見方と相まって,日本が日英同盟を解消した結果 — 老獪な英国に見放されて — 外交力を喪失し国際的に孤立して行った歴史的前夜を私は連想してしまう。民主党政権の外交力の真価がいま問われている。舵取りを誤らないようお願いしたいものである。