歌野晶午『死体を買う男』

作品のなかに作品があり,その間の虚実のゆれをミステリーに仕立てた佳品。萩原朔太郎がホームズ,江戸川乱歩がワトソンの役回りで登場するのがお茶目である。どうせなら,作中小説は乱歩調を徹底し,表記を旧字旧仮名遣いとし,大正的情調の細部で堪能させてほしかった。そういう点で,私は京極夏彦に軍配をあげる。