オリガ・セダコヴァ Ольга Александровна Седакова の著した教会スラヴ語辞典を Ozon から入手した。原題は «Словарь трудных слов из богослужения. — церковнославяно-русские паронимы» М., 2008.(『正教会典礼文献の難語辞典 — 教会スラヴ・ロシア同語源語』)。本書は,現代ロシア語と同義のようにみえて意味の異なる教会スラヴ語単語の辞典である。日本語でも古語の「をかし」と現代語の「おかしい」とでは意味が違う。そういう異義語を解説した辞典と考えてもらえばよい。
セダコヴァはなにより詩人,西欧文学翻訳家として高名である。一方,モスクワ大学のスラヴ文献学研究科を終えた学者でもあり,このような教会スラヴ語関連の学術的著作もなしている。
本書では,教会スラヴ語に対応するギリシア語が併記されている。西欧語がラテン語から多くの語彙を相続しているとすれば,ロシア語にとってその関係にあるのはギリシア語だからである。キリル文字そのものがギリシア文字を範としているのだ。
黄土色のハードカバー装丁は,私の好きなタイプの本。教会スラヴ語のクラシックなフォントが美しい。その引用を LaTeX(upLaTeX)で組版してみた。教会スラヴ語は SlavTeX フォント,ロシア語,ギリシア語はそれぞれ LH フォント,CB フォントのコンピュータ・モダン書体を使用した。LaTeX 原稿 sedakova_slovar_cite.tex,組版結果 PDF sedakova_slovar_cite.pdf も置いておく。