『地獄少女』

TSUTAYA のレンタル DVD で『地獄少女』を鑑賞。地獄少女プロジェクト原作,アニプレックス,スカパー・ウェルシンク制作によるミステリー・ホラー・アニメである。

深夜0時のみアクセス可能なインターネットサイト『地獄通信』に,恨みを晴らしたい対象の人物の名を書き込み,地獄少女から与えられた藁人形の糸を解くと,対象人物が直ちに地獄に送られる,という恨み晴らし物である。一話の主要登場人物(いじめなどで恨みを抱く者)は多く中学・高校生であり,インターネットという現代性と相まって,この時代の十代の若者の心の闇がテーマになっているといえる。

勧善懲悪に徹した「必殺シリーズ」とは趣が違っていて,この作品では依頼者も死して地獄を彷徨う,代償を伴った「人を呪わば穴ふたつ」のモチーフが,ストーリーにひねりを効かせている。この物語構造は,恨む者,恨まれる者の関係が一義的ではなく,闇雲に人を呪詛することの孕む当人の愚かさ,子供じみた性格を浮き彫りにする反転ストーリーをも導き出していて,面白い。

でも,それはそれとして。私には,主人公の地獄少女・閻魔あいの華麗な花柄の黒い着物や,禊とそれに続く着替え,真っ赤な瞳,彼岸花の群生(少年のころの,墓場に燃える曼珠沙華を思い出した),冥途の河渡りの精霊流しなどの伝奇的・幻想的絵が,私の酷愛する江戸川乱歩の頽廃趣味,大正ロマンに充ちていて,なんともいえないのである。ここには竹久夢二などの美人画の確かな伝統がある。オープニングに挿入された河鍋暁斎の地獄絵図が,和風ホラーのアナクロニスティックな古典的趣を作品の現代性に添えている。この際,黒衣の美少女と彼岸花という季節感と,物語との整合性の瑕疵など,私にはどうでもよい。

そういう意味では,私にはエンディングテーマ『かりぬい』の絵だけで十分なのかも知れない。オープニングテーマの「いつか光にむかう 逆さまの蝶」なんて詞も詩的ではないか。ただし,一目連,骨女,輪入道といったサブキャラクターどものヤクザ風情(「お嬢」はねえだろ)が,どうしようもなく恐怖感の品を落としてしまっているんだけど。

恨み晴らします。通俗の極みである。でも,必殺シリーズともども,私はかかる型に嵌ったドラマが大好きなんである。ワンパターンであるからこそ堪らないのだ。

地獄少女 5 [DVD]
アニプレックス (2006-05-24)

付記:YouTube に『地獄少女』エンディングテーマである『かりぬい』がアップされていた。おお,これだけで充分。エンベッドしておきます。ブルーの彼岸花,菊,紅葉,蜘蛛の糸,黄泉の河,黒い小袖のヒロインなど,幻想的な日本美を堪能いただきたい。