プーチンが日本に来た。ロシアの経済不振の打開において日本の協力を期待していることは見え見え。最近,北方領土問題について,麻生総理が「これまでにない独創的アプローチで」と言い出したので,何事かと思っていたら,3.5 島返還論が出て来て,冗談じゃねーぞと思っていたところだった。
今日のニュースを見ていると,麻生 — プーチン首脳会談では「北方四島解決の必要性で一致」ということだったので,中途半端な 3.5 島返還論が葬り去られたようで,軌道修正の意味はあったということか。いずれにせよ,またやり直しかよ,の感が否めません。まあ,川口外務相の無策のおかげでそれ以降ロシアとは(北朝鮮同様に)まともに付き合えていなかったのだから,「しきりなおし」ということでしょうか。
経済協力,戦略的パートナーシップ云々はよいことだと思う。でもそうはいっても,北方領土問題が解決しないうちは平和条約はなく,平和条約がないうちは,日本にとってロシアは,終戦直前に満州・朝鮮を侵略した上にシベリヤ強制抑留をやり,北方領土・樺太までパクリやがった「野蛮国」であり続けるわけである。「侵略の歴史を反省しろ」ってな具合に(どこかの国を見習って),このスターリン・ダーティに対する恨みをねちねちと日本政府は言い続ければよい。
米原万里が書いていたけれども,日本は世界で一番強い国「だけ」にべったりで,それ以外の国々とはまともな外交ができないという歴史を持つ国である。文明の親とも呼ぶべき中国,江戸時代のオランダ,明治・大正のイギリス,そして昭和・平成のアメリカ,となかなかちゃっかりしている。その転換点は歴史的異変そのものである。文化的にもっとも尊敬しているはずのおフランスとは,その軍隊がヘボなゆえか仲良くした試しがない。日英同盟を解消した瞬間に外交無力のおかげで奈落の底に落ちて行き,戦後米国べったりで再び未曾有の繁栄を手にした。その流れで行けば米国がポシャると今度は中国かロシアということになりそうだけれども,この二国はアジアの隣国なのにいま現在日本人が心情的にもっとも嫌っている国々である。5 年後,10 年後がひどく不安である。日米同盟が弱ったら,伝統的に最強国依存ゆえに外交力が不要だった日本は,この二国を前にして形無しではないか。もしかして,まさか,そのときのために靖國神社と北方領土のカードを取っておくということか?
ロシアは先日,海域侵犯を理由に中国船舶を攻撃して沈没させた。ちょっと注目の事件である。相手が仲の良さそうにみえる中国でも(じつはロシア人が中国人を大いに嫌っているのはよく聞く話である。一方,ロシア政府は米国の属国日本を面白からず思っているけど,ロシア人は伝統的に日本人に敬意を抱いている。日本人にとってはその逆でいつまでたってもロシア人はヤクザな「露助」である),堂々とこういう荒っぽい行動に出るロシア。日本はとても相手にできそうもない。
民主党の小沢さんが代表を辞任した。党首会談の直前,なんでいまなの,と麻生首相もせせら笑い半分で首を傾げていた。小沢さんは,選挙に向けて党内結束のため,のような発言をしていたけれども,だとしたら遅すぎはしないか。政治献金疑惑はその後硬直化したし,小沢さんやっぱり強いワと私は感心したのだけれど,本人は別として他の民主党員の腹が据わっていないようで,党内の動揺はいかんともし難かったということだと思う。民主党は検察官僚の掌の上で自滅したわけである。とはいえ,小沢さんはじつに腹の据わった策士なので,このタイミングにじつはすごい計算があるのかも。
これで次の選挙は自民党の勝ち。でも,小沢公設秘書逮捕までは自民党は自滅状態だったのに,この程度で政治の流れが変わるとはどういうことなのか。これがただ民主党がだらしなかっただけであってくれればと願う。「雲行きが怪しくなったらしょっぴけばよい」なんて風潮はほんと勘弁してほしい。
補正予算も衆院を通過見込みとなったし,さしあたり経済対策の効果が現われることを期待したい。民主党の党内事情なんてどうでもよい。小沢秘書問題の対応にも後手後手でほとほと呆れた。さて,次の選挙はどこに投票すべきか,いよいよ悩ましくなってしまいました。麻生予算によって少しでも経済状況が上向きになるようであれば,麻生政権の安定化を期するべきなのかも知れない。麻生さんは「美しい日本」などという嫌悪を催す陰湿なスローガンで煽ったりしないし,あの楽天主義はこの暗い時代には貴重である(大人だけど面白みに欠けた福田さんだったら,いよいよ国は鬱病状態になったかも知れないではないか)。