X デー

北朝鮮がミサイル発射を 4 月 4 日から 8 日の間に行うと発表した。これが人工衛星であるか否かにかかわらず日本国がその被害を被る可能性がある場合,という条件付きではあるにせよ,麻生首相は MD システムにより迎撃すると明確に宣言した。この前までは米国とつるんだただの強がりだと私は思っていたが,麻生さんは本気である。「ナメンなよ」とまで言っている。この「自衛のための攻撃」への明確な意思表示は,戦後日本の安全保障政策の歴史的転換を意味するものだと思う。武力は保有するが行使しないというのが暗黙の原則だったのではないか。「これからは国際社会に愚痴をこぼすだけでなく行動を起こしますよ」という強気の宣言なのである。政治的トップが自衛隊法を盾に決断したのだから,北朝鮮が折れない限り,もうこれは止められない。X デーの前に,どういう条件で迎撃命令を下すのか説明があるはずである。

もし迎撃が発令された場合,成功するかしないか。4 月初旬の結果によって,世界情勢に大異変が起きるかも知れない。成功したら,北朝鮮に戦争の口実を与えるのは確実だ。弾道ミサイルの脅威のレベルが下がり,北朝鮮での金政権の権威は失墜するかも知れない。これまで大人しかった日本は,お伽噺のようなミサイル迎撃において実戦で成功した唯一の国として,一挙に軍事的超大国にのし上がるかも知れない。好戦的なひとたちの発言力が増大するかも知れない。もし失敗したら? ほんと怖いですね。

領域内着弾回避の判断により迎撃作戦中止という結末がもっともあり得そうである。その限りにおいて,麻生さんの発言は外交戦術として評価してよいと思う。国連への問題提起,独自の制裁,憲法範囲内での実力行使(迎撃)と,今回三つの対抗オプションを前もって提示した。迎撃の事態にはならないと見越したうえで,実力行使というまったく新しいカードでもって「これまでの日本とは違う」ことを北朝鮮に認識させ得たのではないだろうか。

でも,迎撃作戦に入る前に国民,国際社会に日本の行動論理の正当性をきちんと説明してほしい。ことがことだけに,私はいまちょっとびびっています。