観ましたよね。日本が優勝しました。日本チームの皆様,おめでとうございます。私は午后,会社をサボって帰宅して,8 回の攻防から娘とテレビ観戦した。決勝戦に相応しい凄まじい試合であった。これぞクラシック。
今回の優勝は,なんと言っても,投手力の素晴らしさが勝負を制するということの証明だろう。松坂投手が MVP に選ばれたそうであるが,岩隈投手こそが MVP に相応しい,と誰もが感じているのではなかろうか。決勝という特別な緊張感のなかで先発して,しかもあの強力韓国打線を相手に 8 回まで好投したのだから。あの崖っぷちのキューバ戦で岩隈投手の好投による起死回生の勝利。これで日本チームは平常心を取り戻したのだから。私は個人的には,シリーズを通して青木選手の奮闘が印象的である。
しかしながら,私がなによりも感銘を受けたのは原監督の精神力である。北京五輪での不甲斐ない結果を受けて辞退者が続出するなかで,最大の責任を引き受け,戦いのマネージメントの原理原則に徹し,しかも最高の結果を出す。信じられない。原理原則へのあまりの忠実さに — 例えば,韓国との 2 戦目で 1 点ビハインドの場面で弱気に見える送りバントを命じ,相手投手に合わせて先発メンバーを頻繁に組み替え,支柱という象徴的意義により不振のイチローを使い続けたことなど — ときに疑問を覚えないではない場面もあった。しかし,今日の決勝戦で 10 回表ツーアウト 2, 3 塁の場面(右投手にとって右打者とのほうが組し易いし,満塁のほうが守り易いのだから敬遠するのが定石ともいえるあの場面)でイチローを敬遠しなかった,原理原則を外した韓国采配との差が,最終的な結果に出たということだと痛感する。メークミラクルにはミラクルではない理由があるのだと — 阪神ファンとしても — 悟った次第である。
今日の朝日の夕刊によれば,日本全国で真昼の大フィーバーだったようである。韓国が第 3 戦で勝利したとき太極旗をマウンドに立てたり,応援団が竹島領有をアピールしたり,そういう国際スポーツイベントの精神を紊す韓国のガサツな行動が日本人の顰蹙を買い,ネットではとかく反韓的論調が溢れていた。「韓国人はみな無礼・恥知らずだ」に類するバカな意見が多くて目を覆いたくなってしまった。一事が万事か。日本優勝のフィーバーぶりはそんな韓国に対する敵愾心も一役買っているのは間違いない。こういうことを目の当たりにすると,国民を団結させるのには対外的に「敵」を作ることが大事なのだという政治学の真理が身に沁みてわかる。
なにはともあれ,よかったよかった。日本チームの象徴・イチローが最後の最後で決勝打を放つというとんでもないドラマも,語り継がれるものとなるだろう。日本全国みんな大喜びしているのが,この苦しい時期であるだけに,いっそう感動的である。「侍」たちが負けて切腹を促される,なんてことを見ずにすんで正直ほっとした。しかし,韓国も強かったなあ。わずかなチャンスを活かす尊敬すべきチームだった(あの韓国チームのユニフォームを見て中日ドラゴンズを連想したひと,根に持つのはやめましょう)。アジアの隣国同士がこうした世界の舞台でしのぎをけずる様は,このうえなく尊い。