酒井陸三『ロシアン・ジョーク』

久々のジョーク集。本書は,ロシア人と深い付き合いのある著者による,現代ロシア世相を踏まえたジョーク集である。歴代の権力者と時代を軽妙に素描しつつ,市民による世相の捉え方をジョークとして集めたところが,酒井の著書のユニークなところである。大笑いさせてくれる数ある収録ジョークのなかから,ひとつだけ,引用させていただく —

ロシアの指導者たちは,次のような教訓を後世にもたらした。
・レーニン......絵空事でも国を支配することができる。
・スターリン......一人でも国を支配することができる。
・フルシチョフ......バカでも国を支配することができる。
・エリツィン......家族でも国を支配することができる。
・プーチン......スパイでも国を支配することができる。
酒井陸三『ロシアン・ジョーク』学研新書, 2007, p. 209.

本書の動機には,もはや世界の覇権国にのし上がろうとしているロシアに対し,日本人はイメージ先行の食わず嫌いをしている場合ではない,という国際ジャーナリストとしての思いがある。そういう点こそが,本書の美点である。

日本を『日出る国』と習い,どこか小さなリスペクトを感じているという彼ら [ロシア人: 私註] は,日本に対し大きな興味と好奇心を持っています。もはや国と国だけでなく,人と人が付き合う時代。私たちもこのジョーク好きで,呑兵衛で,ともすれば,束になると迷走するジャジャ馬ならぬジャジャ熊のような隣人と,しっかりと向き合い,理解し合うときが来ているのではないでしょうか。
同書, p. 245.