国書刊行会『ロシア・アヴァンギャルド』叢書全 8 巻

国書刊行会『ロシア・アヴァンギャルド』全 8 巻を手に入れた。この叢書は私の大学時代に刊行されはじめ,当時私は『フォルマリズム — 詩的言語論』のみを読んだだけだった。その後,全巻完結するも,買わずじまいのまま,今ではほぼ品切れ状態となってしまっていた。全巻揃いが 35,000 円で古書店に並んでいるのを,指をくわえて見過ごすばかりであった。今回その半値でネット・オークションで競り落としたのである。

ロシア・アヴァンギャルドの活動については,美術を中心としてかなりの日本語文献がある。しかし絵画のみならず,映画,演劇,詩,文芸評論などの芸術現象を全般的に取上げ,芸術作品・評論の翻訳と編者による注釈とにより俯瞰したのは,日本では本叢書を措いて他に類を見ないと思う (音楽への配慮が足りないのが欠点ではあるが)。タイトルにもそれが現れている — 1:『テアトル I — 未来派の実験』,2:『テアトル II — 演劇の十月』,3:『キノ — 映像言語の創造』,4:『コンストルクツィア — 構成主義の展開』,5:『ポエジア — 言葉の復活』,6:『フォルマリズム — 詩的言語論』,7:『レフ — 芸術左翼戦線』,8:『ファクト — 事実の文学』。これらは亀山郁夫や大石雅彦,桑野隆,浦雅春といった現在,第一線で活躍するロシア文化の専門家たちが — 当時まだあまりその名を知られていたとはいえないが,— 新進気鋭の先取的インパクトをもってなした,素晴らしい仕事である。高価な叢書であるわりに装丁に品がないところも,ロシア・アヴァンギャルドらしくてよい。

とりあえずはネット・オークションで見いだしたゆえの衝動買いに近い。この手の本は腰を落ち着けて取り組むべきものなので,学者や学生でもない限りなかなか読み通すのは難しい。『ポエジア』あたりから拾い読みするとしよう。

20090122-russian-avangarde.png