北朝鮮テロ支援国家指定解除。トホホ。

最近の米国政府は本当に理解に苦しむ行動を起こす。

金融不安対策に税金を投入し,経済的活動においても運命を共にしそうな G7 各国にも理解を求めるような緊急事態のこの時期に,米国議会でも相当量の反発があるとされる北朝鮮テロ支援国家指定解除が発効した (時事通信の記事)。つまりこれで北朝鮮は晴れて「まともな国」の仲間入りというわけである。中東に肩入れしている間は絶対に米国が強硬路線に走ることがないと読んだ北朝鮮外交の大勝利となった。

また,米国政府は 10 月 4 日のこの渦中に突然,台湾に武器売却を行ったと発表した。日本だけでなく中国をも苛立たせる行為。まったく米国はなにを考えているのだかさっぱりわかりません。

米国金融問題に絡んで東京三菱UFJ銀行が瀕死の投資銀行モルガンスタンレーに90億ドルを投じて救済に乗り出すなど,日本からのテコ入れが話題になっているその傍らで,いきなりの指定解除である。本当に日本国は舐められているわけである。麻生さんがブッシュ大統領から解除の通知を受けたのが発効のわずか数十分前というのだから,麻生さんもブチ切れ寸前だったのではないか。これはもうポチ国日本へのからかいとしか受けとめられないではないか。

それにしても,北朝鮮テロ支援国家指定解除に猛烈に反対していたのは日本だけで,中国も,韓国も,ロシアも,北朝鮮を対等の国として認めたほうが核問題の解決を早めると考えており,大局的に見ると日本はこの件では鼻つまみものに見られていたのである。日本はまったく外堀を埋められていたにも拘らず,「解除反対」だけのヤジ外交に終始した結末がこれである。日本自身で「北朝鮮テロ支援国家指定」をすべきなどと — 北朝鮮にとってなんの効力もないのに — いうノーテンキな新聞社もあるようだ (しかも,三国志を引用するなんて古くさい日本人特有の飛躍論調丸出しで。その前に「敵を知り己を知れば百戦危うからず」ではないだろうか)。自分は正しいと思うのは必要だけど,周りを見渡して己の主張の非現実性を悟ってやり方を変えないといけないわけで,どうもそれができないのは島国の伝統なのか。

米国は「指定解除」で少なくとも北朝鮮の核無力化の約束を取り付けた。それは約束を履行することが付き合いの基本であることを北朝鮮に認識させたことでもある。日本は「どうせ北朝鮮は約束を守らない」の一点張りで,大韓航空機事件の 1988 年以来,拉致問題のうやむや化,ミサイル発射事件と北朝鮮に舐められ続けている。米国の手法とどちらが建設的なのか。拉致問題でも米国のような「取引」があってもよい気がするが,「どうせ北朝鮮は約束を守らない」というわけである。

理解に苦しむべき対象は米国ではなく日本の方かも知れない。拉致問題の進展がなによりも心配だが,いまや日本がアジアで孤立してしまったも同然の状況も不安である。そのうち,国際連盟の席を蹴って強がった松岡洋右みたいな愚かな政府要人が出てくるんじゃないかと。国益に反するそんな強がりを「毅然たる態度」などと囃し立てるやつが出てくるんじゃないかと。