アメリカ社会派映画二本

ハリウッドが撮った社会派映画を二本観た。『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』と『ニューオーリンズ・トライアル/陪審評決 』。いずれもアメリカ人の,信念に基づいて問題に立ち向かってゆく正義感と,なにがなんでも意思を貫く行動力とに打たれる名作といってよい。結末のあっと思わせるトリックも出色の,お勧めの映画である。

『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』は 2003 年,アラン・パーカー監督作品。冤罪で無辜の市民を殺してしまうかもしれない,死刑制度の危険性を訴える物語。まだ観ていないひとのために,結末をしるすのは控えるけれども,司法制度を陥れてでも理念を証明しようとする主人公たちの行動力に感動する。

ライフ・オブ・デビッド・ゲイル
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン (2003-11-28)

『ニューオーリンズ・トライアル/陪審評決 』は 2003 年,ゲイリー・フレダー監督作品。この映画は銃の所持が正当化された社会と陪審員制度とをテーマとする法廷ものである。アメリカ陪審制度の法廷ものは,ヘンリー・フォンダ主演『十二人の怒れる男』(シドニー・ルメット監督作品, 1957 年) などの名作があり,アメリカ人の Justice に対する情熱と行動力を表現する映画の伝統をなしていると思う。裁判というものにおいて陪審員たちは黒を白に,白を黒にすることをいかようにでもできる,という前提がまず興味を掻き立てる。ジーン・ハックマンとダスティン・ホフマンとの法廷対決が古い映画ファンには堪らない魅力である。日本でも陪審員制度が導入される。日本人はアメリカのこの映画で描かれるような真摯な態度で陪審員制度に立ち向かうことができるのだろうか。

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日曜日の未明,サッカー・ワールド杯最終予選の日本戦がスタート。わくわくしながら夜更かしして観た。とにかく日本がアウェーで勝利して幸先よい出だしといえそうである。でも,勝利に貢献したのは中村俊選手や遠藤選手といったベテランであって,若い選手にまったくよいところがないのは見ていて痛々しいくらいである。やっぱりオーストラリアとカタールに抜けられてしまう危機感がいや増しに募ってしまった。

「海外組」なしでも,個々人がへたくその印象の強かったとはいえ,素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたオシム監督とは異なり,岡田監督のチームは中村俊選手や松井選手などのタレント頼みではないだろうか。ネットでも結構叩かれているようである。オリンピック代表もそうだけど,いまの日本 A 代表は「海外組」に代表されるタレントがいないととたんにつまらない試合をしてしまうのが哀れである。オシムさんのチームはへたくそだったけど,試合を重ねる毎に成長しているなあと実感させてくれた。岡田さんになってまた一からやり直しの印象が強いだけでなく,この「成長」の感じがまったく見られなくなったのが残念である。

予選突破はもしかすると可能かも知れないが,南アフリカで恥ずかしい試合をするのは確実のように思われる。ならば,予選落ちしてもよいのできちんとした — 要するに,好不調による場当たり的なメンバー選出ではなく,ポリシーをもったチーム作りをして — 人材育成の姿を見せてくれたほうが,私としては納得できるんである。