台湾政府怒る!

尖閣諸島近海で台湾の魚船と日本の巡視船が接触した問題で,台湾政府が異例の激しい対日批判を繰り広げている。日本政府も,町村さんなどが領海侵犯は遺憾だと,当然ながら,強気の発言をしている。領土問題は国家の威信をかけた非常にデリケートな問題である。日本だって北方領土近海で日本の漁船がロシアに銃撃され死亡者が出たときは,激しい対露批判が吹き出した。今回は台湾との間で立場が逆転しただけである。

台湾は新しい総統になって中国と急速に接近していて,今回のつば競り合いもその中国寄りの政治的傾向を反映した,多分に政府の政策的な反日行動だと受け取れる。まあ中国も台湾も日本との関係を致命的に損ねるような行動は慎むはずだと思う。日本政府も,台湾とのお付き合いが下降になることと国益とのバランスを考えて,強行路線に走るなり,なあなあでごまかすなりしてもらいたいと思う。台湾政府が必要以上に騒ぐなら,新幹線の技術者を引き上げます,程度でもそれなりの効果があるように思う。いずれにせよ領土問題なのだから政治的に戦ってほしい — もちろん武力闘争などの馬鹿げた行動ではなく — と思う。

これでいよいよ「嫌中」 — 「反中」でないところがミソ — の雰囲気が醸成されて日本政府の思うツボである。これは「米国大好き」の裏返しだからである。福田さんはどちらかというと親中国派だと聞こえているけれど,この支持率低迷はどうしたものか。今日のニュース・ジャパンの報道によれば,昨年の参議院選挙直後の,あの声だけは大きかった安倍内閣と同程度にまで支持率が落ちたらしい。サミット後に解散か,内閣改造かを迫られた挙句に麻生さんにバトンタッチなんて事態になったとしたら,「反中」の雰囲気に変わりかねない。いずれにせよ,日本も中国・台湾なしにはやっていけないのだから,硬軟使い分け,ほころびを広げないよう,慎重にお願いしたいものである。

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秋葉原での殺傷事件が会社でも大いに話題になっている。ホコテンにはもう行かないという者もいた。犯人が携帯サイトに頻繁に書き込みを行っていたことで,またぞろネットワーカー,アニメやゲームおたくが,可哀相なことに,「やっぱり」的な冷たい視線を浴びるわけである。あの容疑者はただの自暴自棄の短気な殺人者であって,その心性はアニメやゲームとはなんの関係もないのに。毎日ご飯を食べる契約社員は危ないというくらいアホらしい話である。でも普通のひとはこういうパターン — 「ゲーム脳」だとかの根拠のない馬鹿な極込み — に嵌めて時事を語ることが大好きなんである。

それにしても,アニメおたくへの嫌悪といい,嫌中といい,日本人はマスコミの偏向報道や政府の情報操作に弱いとつくづく思う。普通の良識の持ち主ならば,中国やロシアのやっていることと比べると,イラクやベトナムや日本で行った米国の行為は未来永劫の地獄堕ちに値する極悪だと思われるのに,日本人の外国に対する好感度では圧倒的に米国が高い。

とはいえ,米国人は真面目で純真で責任感が強く,ロシア人と同じくらい私は尊敬している。大国というのは,国民のひとりひとりの個人は人間性豊かでかつ優秀なんだけど,国家として有象無象の姿をとった瞬間に醜悪な本性を現すのは本当に面白い。

(※ 12.7 付記)

秋葉原無差別殺人事件の容疑者の人格について,派遣社員の扱いの酷さも事件の背景にあるとの意見がある。だからといって無差別殺傷が正当化されるはずはもちろんない。やはり彼はただの殺人者である。

あるひとがイスラムのテロについて,「殉教」によって現世の貧困を清算し,彼岸の幸福を希求するという構造があると指摘していた。貧困が根本にあるいうわけである。一方,日本人がテロ行為に走るのは,酷薄な社会と未来への絶望からだという。その際,神のない日本人はどうも自己実現願望で −−− 端的には有名になりたいために −−− テロ行為に走るとも。

派遣社員の扱いの酷薄な現実という社会問題なら政治が手を打つべきである。でも「自己責任」という政治家の発言が堂々とまかり通るのであってみれば,時代はまだまだ暗くなる一方のような気がする。自民党め!次の衆院選挙を見てろよーってか!