北朝鮮拉致問題の進展

ここ数日で,北朝鮮拉致問題解決に向けて前進が見られる。これは日本の外交努力というよりも,米国が米朝間の関係改善に向けて,テロ支援国解除の見返りに核問題の解決を迫る交渉のオマケとして,子分である日本のために口利きをしたおかげである。日本は強い米国にすがってきて本当に正解でした。日本政府が,2000 年の訪朝を果たした小泉さんの後は,もはやこの外交的大問題について文句をいうばかりで,対北朝鮮政策においてなんの外交努力もしていないのは明らかなのだ。経済制裁は犬の遠吠えである (なんとなればこれは相手と戦わずして自分だけでできることだからである。また北朝鮮に対して何の効果ももたらさなかった)。

ところが,この漁夫の利,このブレークスルーともいえる追い風の状況に乗じて山崎拓ら超党派議員が日朝交渉を目論む動きに対し,あの「美しい日本人」安倍さんー訪米で冷たくあしらわれてリセット辞任しちゃった元首相ーが「百害あって利権あり」と冷や水を浴びせて話題になっている (産経新聞の Web)。拉致問題の進展は経済制裁の成果だなんて,いうことだけは相変わらず威勢がよい。安倍さんは首相のころ拉致問題対策委員会を創設し積極的に関わっていたが,こうした後ろ向きの発言を耳にするにつけ,この振る舞いは実は拉致問題を解決したいのではなく,米国の機嫌を伺い,庇護の下に居続けるために反北朝鮮プロパガンダを張っていただけだったのだということが判る。

なんと「美しい日本人」だこと。ネットの書き込みも山崎拓らの行動を批判する風潮が趨勢のようである。反北朝鮮・反中国プロパガンダは「美しい日本人」たちにまんまと根付いてしまったようである。米国のライス国務長官などはこうした「元宰相」安倍さんの態度を見てせせら笑っているに違いない — このひとたちは拉致問題を本当に解決したいのか。どうも「美しい日本」の国民には,貧しい北朝鮮を嘲笑っているほうが,拉致された国民の帰還や拉致事件再発防止の確認よりも,自尊心が満たされて気分がよいらしい,と。もちろん北朝鮮からはこれからも外交の場でからかわれるに違いない — 君たちみたいな主体性のないヒモ政府と話しても先に進まないから。

それにしても「美しい日本」という表現は,かつて川端康成やドナルド・キーンの著書によって誇らしい印象が私にあったのだけれど,米国のヒモ・安倍さんのおかげで一番耳にしたくない,嫌悪を催す言葉になってしまった。