BCJ ブランデンブルク協奏曲演奏会

今夜は妻とミューザ川崎シンフォニーホールでのコンサートに行った。鈴木雅明率いるバッハ・コレギウム・ジャパンによる J. S. バッハ・ブランデンブルク協奏曲全曲演奏会である。この曲集は楽器編成が様々であり,全曲チクルスで聴けるコンサートは極めて珍しいのではないか。しかも我が国を代表する古楽アンサンブルによる演奏である。座席は舞台の上手2階席でいまいちなんだけど,ヴァイオリンの演奏や指揮者の様子を正面から眺めることができた。

演奏に先立って,鈴木雅明が短い解説をした。今夜の演奏の特徴として二つあるとのことだった。一つは通常のチェロに代えてヴィオロンチェロ・ダ・スパラなる楽器を用いていること。これはチェロとヴィオラの間くらいの大きさの,ヴァイオリンのように肩に提げて奏する楽器である。二つ目は,第三番の第二楽章に,三台のチェンバロのための協奏曲ハ長調の第二楽章をホ短調に移調したものを挿入したこと。こういう古楽の即興性や,実演の自由度の高い楽器法を汲んだ試みは,生で聴く面白さ,期待感を高めてくれた。

そのヴィオロンチェロ・ダ・スパラが活躍する第三番が素晴らしかった。その奏者のひとりは寺神戸亮であった。バロック・ヴァイオリンの,いまや圧しも圧されぬ世界的演奏家のひとりである。彼の演奏を生で聴くのは,かつて横浜音楽堂で聴いたクイケン・クヮルテットによる『音楽の捧げもの』以来である。あと,第一番の終楽章メヌエット,第四番の最後のフーガは精妙で凄かった。第五番の鈴木雅明のチェンバロ独奏も,軽快で愉悦に溢れる名演であった。私がいちばん好きな第六番についても,ヴィオラの掛合いがいぶし銀のように渋かった。

もう大満足。コンサートが終わったあと,キリンシティでビールを呑んで帰宅した。私のブランデンブルクのお気に入りレコードはニコラウス・アーノンクール指揮ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスが 1962 年に録音した盤だけど,BCJ による録音も是非手に入れなくちゃと思った。

Bach J.S: Brandenburg Ctos Nos 1-6
N. Harnoncourt (Dir)
Vienna Concentus Musicus
Warner Classics UK (2010-02-09)

BCJ-080621.png