妻が総合俳句誌『俳壇』2008.1 月号(本阿弥書店刊)を入手した。小林一茶の特集が組まれていた。ぱらぱらとコラムを読んでいて,マブソン青眼の書いた『ユマニスムへのみちのり』が目に留った。著者は長野在住のフランス人俳人である。
一茶が人生の悲しみをユーモラスに俳句に結晶させたまさにその「世界観の偉大さ,そのエコロジー的精神,そしてそのユマニスム的精神」を,著者は「日本でも」見直す時期に来ていると説く (p.89)。
一茶は年老いてから幼い子供を二人亡くした。その人生最大の悲しみを受けて俳文集『おらが春』を書いた。
他力信心他力信心と,一向に他力にちからを入れて頼ミ候輩ハ,ついに他力縄に縛られて,自力地獄の炎の中へぽたんとおち入候。[中略] しかる時ハ,あながち作り声して念仏申ニ不及。(『おらが春』二十)
これを引いて,マブソンは書いている。「つまり,人間は他力 (仏や自然) に頼ることばかりでは救われない。頼れる時は頼ってよし。しかし,この世は露のように儚いものだからこそ,覚悟をもって力強く生きてゆくしかない」(p.89) 。
「人間の心には決定的な変化が起り得る。一茶はそれを教えてくれる俳人である」(p.86) という書出しからまず私は打ちのめされた。