今日の朝日新聞夕刊によれば,大学院生がウイルスの組み込まれたアニメ画像を Winny を介して「無許可」で流していたことで,「著作権法違反」として逮捕された。ウイルス作成を取り締まる法律がないため,アニメ画像をばらまいた行為で捕まったらしい。この学生がウイルスを作成していたかどうかはまだ「可能性」の域を越えないとも読み取れる内容であった。そういえばかつて Winny の開発者も逮捕された。この場合も「著作権法違反」であった。
コンピュータウイルスをばらまく行為そのものが,確かに無責任で迷惑極まりないのだけど,朝日が報ずるような罪状で逮捕されてしまうというのはどんなものか。主旨はウイルスを作ったことらしいが,作ったにせよ彼がばらまかなかったら,ばらまいたのが別人だったら,アニメ画像によらなかったら,など条件を分けて考えれば考えるほど,罪を構成する行為の核心が分からなくなり,本当に起訴できるのか疑わしくなるのではないか。起訴されたとしても,容疑者である大学院生は結局,著作権者に無断でアニメ画像を配ったことに相応する判決になるのではないかと私は思う。
翻って考えてみれば,ウイルスを「作ったこと」で逮捕できるとしたら (朝日新聞ははっきりそう書いている),ちょっと怖い。何がウイルスなのかの解釈如何で,プログラマを牢屋にぶち込めることになりはしないか。メールソフトはウイルスである! なんとなれば著作権法違反の文書を相手の意思によらず他人のコンピュータに電送することができ,その結果相手のコンピュータのディスクを満杯にして機能不能に陥れる危険性があり,すなわち他人のコンピュータを破壊するウイルスと同等である???
この大学院生の裁判がどうなるのかは別として,今回「捕まった」という事実が意味を持つわけである。要するに世の中の悪質なウイルス作成者の見せしめということだと,さしあたり楽観的に考えたい。