Mac OS X プリンタ共有

長年使ってきたシャープのイメージスキャナの具合が悪くなった。読み取った画像に影が出るようになり,品質低下が著しい。どうもセンサーもしくは光源が経年劣化してしまったようである。SCSI 接続で値がはったが,FreeBSD SANE でも利用でき重宝していたのに。年賀状を作るのに子供の描いた絵を読み込む必要があり,仕方なく買い替えることにした。もうあまり出費もできないので,安価なキヤノン製 CanoScan LiDE 90 を購入した。個人的な利用では A4 原稿を 300dpi でスキャンできれば十分である。USB 接続で電源も不要。ローエンドモデルとはいえイメージスキャナも 1 万円を切る時代になった。

Mac OS X ドライバ関連を添付 CD からインストールしようとした。ところが,インストーラが途中で黙り込んでしまった。Mac OS X 10.4 もサポートしているとマニュアルにも明記されているし,へんなアプリを実行しているわけでもなく,どうも解せない。キヤノンのサイトから最新版のドライバをダウンロードして試しても同様である。頭に来てカスタマーサポートの Web から問い合わせを出した。今日のうちに年賀状を作らなくちゃいけないので,しようがなく,Windows 2000 マシンにドライバを導入した。こちらは正常に終了。Windows 上でスキャン画像を jpg 形式で保存し,これを Mac OS X に転送して,Photoshop で加工する。

Windows 上の Excel 住所録から宛名印刷をするかも知れないので,スキャナのついでに,Windows から Mac 接続のプリンタ (これもド安物のキヤノン製インクジェットプリンタ iP4300) を共有する設定も試みた。ところがこれもうまく行かない。「システム環境設定」の「共有」画面において Windows 共有とプリンタ共有とをチェックするだけではだめなのである。Mac OS X はリソースシェアリングを UNIX のオープンソフトで実現しており,プリンタ共有についても cups でサポートしている。cups の適切な設定が必要なのである。以下にその設定手順を整理しておく。

  1. Mac OS X「システム環境設定」を起動し,「プリントとファクス」—「プリント」タブにおいて,通常 Mac ローカルで使う iP4300 のプリンタ名とは別名称で Windows 共有用 iP4300 のエントリ (例えば "iP4300 for Windows") を追加しておく (Mac OS X Tiger ではこれを行わないと Windows から出力できない)。
  2. スーパーユーザになり lpinfo -v コマンドで direct usb のプリンタ URI (プリンタの名称とシリアル番号) を調べる。例えば次のような行があるはずである。
    direct usb://Canon/iP4300?serial=B55565
  3. /etc/cups/printers.conf 定義中の当該プリンタエントリ (<Printer iP4300_for_Windows>) について,"DeviceURI file:///dev/null" の記述を,この URI で "DeviceURI usb://Canon/iP4300?serial=B55565" のように書き換える。
  4. スーパーユーザ権限で cupsd に HUP シグナルを送って定義を再読み込みさせる。つまり,ps コマンドで cupsd のプロセス番号を調べ,これに対し kill -HUP を実行するわけである。例えば以下のようにする。
    # ps ax | grep cupsd [プロセス番号の調査]
      210  ??  Ss     2:42.97 /usr/sbin/cupsd
     3027  p5  R+     0:00.01 grep cupsd
    # kill -HUP 210 [cupsd のプロセス番号を指定してシグナルを発行]
  5. Windows 環境で iP4300 のプリンタドライバをインストールする。プリンタドライバはキヤノンのダウンロード・サイトから取得できる。
  6. Windows「プリンタ追加」ウィザードからネットワークプリンタを "http://Macホスト:631/printers/共有プリンタ名 (この場合 "iP4300_for_Windows")" で登録する。

これでやっとオッケーになった。Windows から "iP4300_for_Windows" プリンタを選択して印刷すると Mac OS に接続されたプリンタから印字されるはずである。

Apple のサイトで解説を漁ったが,なかなかこの特別な設定の情報が得られなかった。『ちょっと便利かも / MacプリンタをWindowsから利用する』というページに助けていただいた。著者に感謝。

* * *

[※ 08/1/4 追記]
CanoScan Mac OS X ドライバについては,その後サポートから回答があり,メーカでは再現せず不明とのことであった。でも所定の場所にドライバファイルが格納されているならば,読み込みしてみてくれとのこと。TWAIN 対応アプリケーション (Photoshop) からスキャンさせるとうまく動作した。サポートには早々の対応をしていただいた。