昨日,神保町の古レコード屋で中古 CD を買った。ブラームスのヴァイオリン協奏曲ニ長調。ヴィクトリア・ムローヴァのヴァイオリン独奏,クラウディオ・アバド指揮,ベルリン・フィルの管弦楽による,1992 年の東京サントリーホールでのライブ録音である。
ムローヴァは 1981 年に華々しくデビューしたモスクワ生まれの女流。1983 年の亡命事件を経て,ロシア流の完璧なフォルムと逞しさを受け継ぐ,いまなお一流のヴァイオリニストのひとりである。最近は古楽やクロスオーバーへの関心が高いようだ。テレビでも彼女のヴィヴァルディの演奏を見かけたし,マシュー・バーレイらとの競演 CD "through the looking glass" も肩がこらず素直に楽しめてよかった。この期に及んで,もう十年以上も前のブラームスの録音をやっと私は手に入れた。
私は久しぶりにロマン派の大作曲家の作品を聴いた。どうしてかこの曲の出だしに『君が代』を連想してしまう。悲劇的な歌いだしに鋭く切れ込んでくるヴァイオリン・ソロはさすがに堂に入った感動的な曲であり,クラシック音楽の定番に相応しい。ムローヴァのソロはなにより正確さを印象づけ,かつオーケストラとの対峙という協奏曲の面白みに溢れている。ロマン派の大曲のほうが彼女には似つかわしい。
Viktoria Mullova (Vln);
Claudio Abbado (Dir); Berliner Philharmoniker (Orc)
Recorded live at Suntory Hall, Tokyo, 1/92.
Philips (1995/01/17)
Claudio Abbado (Dir); Berliner Philharmoniker (Orc)
Recorded live at Suntory Hall, Tokyo, 1/92.
Philips (1995/01/17)