野村喜和夫の詩の朗読の CD を手に入れた。『ututu/独歩住居跡の方へ』(アトリエ・エルスール,ESDP-6001)。野村自身の朗読,翠川敬基のチェロ,大友良英のターンテーブルという異色のコラボレーション。先だって観に行った『朗読フェスティバル2』で知った盤である。妻が主催出版社から入手してくれたのである。
ノイズ性を強調するターンテーブル,ハーモニクスやスル・ポンティチェロを多用する即興味豊かなチェロ,前衛詩の声は,現代的室内楽の先鋭さをこよなく愛する私にとって,それ自体が刺激的である。オペラファンには失礼かも知れないが,どこにでも転がっているベルカントの通俗イタリア・オペラより,よっぽど「人間の声」の奥深さが身に沁みる。現代カンタータとでも呼びたい作品に仕上がっているのだ。ちょっとジョン・ゾーンの『Forbidden Fruit』— クロノス・カルテットの弦楽四重奏,クリスティアン・マークレイのターンテーブル,太田裕美(なんと!)の声による録音が出ている — を思い出してしまう味わいがある。
騙されたと思って聴いてみていただきたい。本当に騙されたような気分になれて最高である。