このところ毎日 Mairusz Wodzicki さんとロシア語ハイフネーションパターンについてメールのやりとりをしている。OT2 や T2D エンコーディングのロシア語旧正書法の TeX パターンファイルを作成したいとのこと。私にも協力してほしいという。彼はなんと, ispell ロシア語旧正書法(革命前のロシア語正書法)の辞書を公開している Serge Winitzki とも親交があり,ロシア語ハイフネーションパターンの制作者である А. Лебедев アレクサンドル・レーベジェフや ロシア語 LaTeX コントリビュータの代表者 В. Волович ヴラジーミル・ヴォローヴィチなどとも頻繁にコンタクトしているという。私になにができるかまったくわからないのだけど,興味津々ではある。
彼はカリフォルニア大学バークレイの数学の先生なので,私が BSD UNIX の伝統は現代のレジェンドだと書き送ったところ,BSD の開発者たちが vi や BSD UNIX を開発していたころの Evans Hall の様子や Bill Joy についての興味深い話を教えてくれた。かつては Solaris を使っていたが現在は Linux ユーザだというのも,BSD ゆかりの大学人であるだけいっそう面白かった。
Wodzicki さんはまた,ロシアの詩人,翻訳家である Ольга Седакова オリガ・セダコヴァの友人でもあり,その作品の熱烈なファンだという。まわりのバークレイの学者連は文学や詩をまったく解さず,寂しいという。欧米でもいまや理科の先生は芸術的教養にはあまり関心がないそうだ。私は Wodzicki さんのメールではじめて彼女の名を知ったのだが,かの高名な古代文学研究者 С. Аверинцев セルゲイ・アヴェリンツェフの薫陶を受けた才媛だそうで,これにも大いに興味をそそられ,Озон ですぐさま彼女の著書 "2 Путешествия" (『二つの旅』) を注文してしまった。