さきほど，なんと中森明菜がバラエティ番組に出ていた。1980 年代の一時期「時代を袖にした女」として一世を風靡したアイドルであった。とある男性アイドルとの醜聞がもとで，姿を目にすることがめっきり少なくなってしまった。そのスキャンダルは，彼女を悲劇のヒロインにはしてくれなかったようである。相手が相手だったこともあり，私にもただただ女を落としたとしか思えなかった。
しかし十年くらい前，ある成人向け深夜番組で彼女がかつてのヒット曲『セカンド・ラブ』を歌うのを聴いて，感動したのを覚えている。少し目頭が熱くなったくらいに。80 年代の華やかなりしころは少し険のある声が私には耳障りでさえあったのだけれど，その夜のステージでの彼女の姿と声は，醜聞とその後の凋落，再起を経て，年齢を重ねた艶と枯でもって，陶然とさせてくれたのである。色っぽかった。
このレコードはちょうどそのころ出たリニューアル・ベスト・アルバム。とくに「Wisper Disc」は，この艶と枯を味わうことができる。恋で壊れ疲れた大人の女性の切ないラヴソング。『水に挿した花』，『予感』，『LIAR』，『陽炎』は絶品だと思います。
さあ，少女のころにかえしてあげましょう...
水に挿した花