次期 Windows Vista のことを少し調べていたら気になることを思い出した。Vista 日本語フォントとして採用されるとされている『メイリオ』のことである。このフォントは JIS X 0213:2004 (いわゆる JIS2004) に対応した新フォントとのこと。
JIS は 83 年版で「森鷗外」の「鷗」を「鴎」に変更するなどの字体変更を行った。まるで鷗外がアッカンベをしているように見えたひとも多かったのではないだろうか。またこの改変において,「祷」のような見たこともない奇怪な「包摂新字体」も採用された。JIS2004 でも 168 字の字体変更を断行している。これらは主に旧字体への置きかえであり,たとえば「辻」,「葛」の文字はそれぞれ二点しんにょう,「かつしか区」の「くず」の字体に改められている。つまりまたぞろ,コンピュータ界では相当の混乱が予想されるわけだ。
JIS の意図不明なこうした改変のおかげで,そのうち日本中のシステムが振り回されるのではないだろうか。圧倒的シェアを有する Windows に JIS2004 が採用されたとなると,UNIX や Mac,旧 Windows システムとのデータ交換でトラブルが頻発するに違いない。「インターネットで申請したフォームは僕の最新 PC だときちんと表示されるのに,送られてきた書類では僕の名前が間違ってるよ」などなど。Windows Vista に変えた瞬間に辻さんや葛城さんは名前がそれまでとは違う文字で表示・印刷されはじめる。あるいは,新字しかないためにしようがなく旧字体の外字を作っていたのがムダになる。
計算機の進化は止めることができず,新しい標準に追随してゆくのはしようのないことではある。しかしなんでまた第一・第二水準の字体を差しかえるのだろうか。さまざまな印刷ソフトウェアが JIS2004・JIS90(もしくは 2000) 両方の対応版・モードを準備するなど余計な仕事をさせられるんだろうな。日本語文字コードはまだまだ当分混乱を免れないようである。