ショスタコーヴィチのヴィオラ・ソナタ

昨日は月一回の妻との外食の日,仕事のあと神保町,お茶の水でデートした。本と CD を買った。

ユーリイ・バシュメットのヴィオラ演奏によるショスタコーヴィチ,ロスラーヴェツほかのヴィオラ・ソナタ集の中古 CD を見つけた。ショスタコーヴィチのソナタは最晩年の遺作であり,冒頭の五度音程のピツィカートと,月光ソナタふうの夢幻的なモチーフとが印象的な名曲である。

私がこれまで愛聴してきた初演者フョードル・ドルジーニンの盤と比べると,バシュメットはさらにテンポを落とした重い演奏になっている。モダニズム,悲痛さが強調されているように私には思われる。なかなかの名演である。ピアノはともに初演者ミハイル・ムンチャン。とはいえ,バシュメット盤もよいけれど,私は淡々としたドルジーニン盤のほうが好みである。ムンチャンのピアノも後者では,雨の日の憂鬱とでもいうような味わいがある。

作曲家であるロシアのメール友達は,モスクワ音楽院に在籍していた 1975 年 10 月,ショスタコーヴィチ死去の報知のまだ生々しい雰囲気のなか,モスクワ音楽院小ホールにおいて,まさにこのドルジーニンとムンチャンとによるモスクワ初演を聴いたという。私は羨まずにはいられなかった。彼のヴィオラとハープのための小曲 "SHADOWS IN LIGHT for Viola and Harp Op. 122 (Dmitri Smirnov, 1999)" も素晴らしい作品である。

残念ながら現在,ドルジーニンの 1975 年録音の CD(ビクター/メロディア VICC-2049)は入手できないようである。