ulatex コマンド

Utf82TeX の機能改善で小さな小さなユーティリティを二つ作ってアーカイブに含めた。ulatex と genchrtbl である。

最近 TeX Q & A で UTF-8 対応の pTeX の話題が続いたことがあった。ptetex という私も使わせていただいているインストール・ツールが pTeX の日本語コードを UTF-8 で処理できるようにしたのである。これは JISX-0213 対応の文字拡張ができるようで,今後に大きな期待が寄せられる。けれども,まだ多言語コードを個別の言語パッケージに食わせるまでにはいたっていないようである。つまり Utf82TeX を私自身捨て去ってしまうまでにはいかないようである。

この Q & A の議論の中で Utf82TeX を使って変換したのちに,iconv で日本語コードに変換しなければならない面倒について触れているものがあった。私としては Utf82TeX はもともとコード変換そのものが仕事ではなく,コード変換にはすでに存在する優れたソフトがあるのだから,組み合わせて使えばよいと考えていたし,それこそが UNIX 文化のよいところだと思っていた。そんなの,スクリプトを数行書けば終わりだからである。

かつて UNIX ユーザにとって計算機を使うこととプログラミングとは同じことがらであり,フィルタを組み合わせたりシェルスクリプトを書く行為は常識であった。でも Linux デスクトップがこんなに普及し,まったくプログラミングしないですませられる現在,ユーザからみれば確かに面倒なのかな,とも思う。というわけで,自分の使っているシェルスクリプトを調整して添付することにした。Windows 向けにもバッチを書かなくてはならなくなり,苦労した。

これは Utf82TeX で UTF-8 文字を TeX シーケンスに変えたのち,iconv で日本語コード変換を施し,platex コンパイル,pdf まで生成するという一連のステップを,単に組み合わせただけの単純なしろものである。今回これだけではあまりに芸がないので,platex の log をチェックして未解決の参照が存在すれば複数回 platex を自動実行するような機能をいれておいた。\ref などの命令がきちんと解決するまで勝手に動くというもの。とはいえ,Windows 版にはこの機能をいれる元気がなかった。

ついでに genchrtbl を付けた。こちらは Utf82TeX の変換テーブルのもとネタを生成するツールである。ユーザの追加したい言語のテーブル作成にあたり,文字モレを起こさずひな形を自動生成して,ユーザ負担を減らす目的である。O氏が Utf82TeX のための拡張テーブルを公開してくださって私はとても嬉しかった。これで,さらにユーザが得意分野のテーブルを作ってくれたら,それこそ私の小さな試みも甲斐があったというものである。