今日,トラブルプロジェクトの支援のために,私の下に部下がひとり付いた。本来私が所属する公共システムの事業部の部長が私のために駆け回って,若い SE をひとり派遣してくれたのである。彼は今年三年目の,やっとひとり歩きをはじめた SE である。某省庁システムを構築し終えて,やっと落ち着いたとき,トラブル対応の新たな試練を課されたわけである。
彼はその省庁システムの稼働維持対応 SE として名指しで顧客から雇われている身であってみれば,これを引っぺがすのは問題である。私の上司は,この若者 SE の不在を,メンタルの病でしばらく入院することになってしまったという作り話でもって,顧客に説明したそうである。もちろん「入院」してしまった担当者の仕事は残された要員がカバーするのである。こういう話をきくと涙が出てくる。普通の企業からみるとバカバカしい話であるが,独立採算制を採る複数事業部からなる大企業では,事業部を跨った支援は,支援する側の事業部にとって一文にもならないのだ。ウチの事業部は,トラブル対応,非常事態というものがいかなるものであるか,どういうモードで身の振り方を決定しなければならないか,どういういきさつにせよ困った同僚を援護射撃しなければならないのだということを知り抜いているのである。要するに,こういうときは儲を度外視して「仕事」をしなければならないのだということを,そういう行動が会社の体力を増進するのだということを経験で知っているのである。なんのために働くのかということを,こういうときに痛切に感じてしまう。