トリノの冬季オリンピックが閉幕した。今回のオリンピックは,トラブル対応のおかげで一場面も,テレビのニュースの報道もまったく見なかった。女子フィギュアスケートでの荒川静香の快挙。東洋人は氷上に立つだけで減点されるとさえ聞いたことのある主観的な競技であってみれば,妻からその知らせを聞いたとき,採点基準が合理的に改変されたのかと,勘ぐりをしてしまったくらいである。
やわらちゃんがはじめて金メダルを獲得したときはじんとくるものがあった。しかし私は,女子サッカー日本代表のストライカーが普段はスーパーのレジ担当だったというエピソードのほうが,人間の詩を感じ,能ある鷹の隠したツメをしかとみたような感動を,覚えてしまう。メダルを取って欲しいのは確なんだけど,そこらへんにいそうなにいちゃん,ねえちゃんのそういう一流に達した技を見せつけられると,日常性に神を見た気分になる。
ホステスの弾くバッハ,豆腐屋の名句,ホームレスの語るルベーグ積分....ひとはみかけによらぬもの。