2月10日は会社の振替休日だった。1月末に行った CT 検査の結果を日本医科大学病院に聞きにいった。とくに悪性というわけではないが,ポリープがあるとのことで三ヶ月後にもう一度検査ということになった。医療費が三割負担になって,CT 検査などを受けると一万円以上かかる。やめにできないものか。
お医者の帰りに,借りた CD をツタヤに返却するため川崎駅に寄った。市役所通りに面した汚くて狭い中華料理屋で,炒飯と餃子を食った。その店はボクシング・ライト級世界チャンピオン某が推薦する店らしく,チャンピオンゆかりのセットメニューの紙がところどころにベタベタ貼ってある。減量しなければならないボクサーのおすすめメニューというのもぴんと来ないなあ。
カウンタしかない店のなかは,50歳以上と思われるオヤジとおばさんでいっぱい。男はみんな労務者ふうでがつがつ食っている。「コプちょだい」という訛で中国人かと知れる店員に注文する。向かいのオヤジは胃が悪いのか,ときおり臆面もなくゲップを繰り返して中華丼をかき込んでいる。右向かいのおばさんは目も大きいが,口も大きくて,拳ほどもある野菜炒めの塊を箸で掬いあげて口に運んでいる。餃子がまず来た。旨い。三個目を食ったあたりで,私の左どなりに,70歳くらいかと思われる,目のしょぼついたおじいさんが座った。
古びたキャップ,ジャンパー,得体の知れない紙袋。ホームレスかとも想像してしまった。と間もなくなみなみと注いだコップ酒がおじいさんにさし出される。おじいさん,昼の12時ですよ。注文してもいないので常連らしい。そのうち私の炒飯も出て来た。旨い。おとなりのおじいさんにも麻婆麺とご飯が来た。ご飯にはまったく手をつけず,ひたすら麻婆麺のいっちょ食い。すごい速さ。
おじいさんは,私とほぼ同時に料理を平らげると,おもむろに紙袋から水筒を取り出し,半合ほど余った日本酒をそこに移し替えて立ち去った。
川崎駅周辺は再開発できれいな「街」になったが,まだまだこんな光景が似合うんである。
家に帰って,『オネーギン』論文のロシア語要約を書いた。私の思いつきを勇気づけてくれたスミルノフさんにも内容を知ってほしいからである。何度見直しても格変化や綴りのバグが見つかる。プログラミングをするよりも数段やっかいな作業だったが,朝方,やっとそれなりの文章ができて,スミルノフさんに「芸術家の目」で批評をくれるようメールを書いて添付送信し,寝た。