昨日久しぶりに CD を二枚買った。川崎のタワーレコードは年末のこの時期,意外と閑散としていた。
一つは波多野睦美のメゾ・ソプラノをメインとするアルバム『ひとときの音楽 — バロックの美しい歌』。いま一つは武満徹の『地平線のドーリア』。
波多野睦美は,その『蟹』や『OPHELIA'S SONG』,『Vagabondaggio』を既に私は聴いていて,かねてから注目の歌手である。今回の作品は,これまでのタブラトゥーラとの競演による録音とは少し異なり,寺神戸亮をリーダーとするバロック・アンサンブルをバックに,より広いステージで,よりメジャーな楽曲を収録している。
『美しい歌』ではバッハのアリア,ヘンリー・パーセルの気品ある歌曲がよい。寒々とした室内に灯る蠟燭の炎のような味わいがある。
『蟹』で見せた匿名性,放浪する名もない一級女性ヴォーカリストといったイメージも,渋くてよかったんだけどなあ。
寺神戸亮 波多野睦美 アンサンブル・レ・ボレアード
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ (2005/09/21)
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ (2005/09/21)
武満徹の CD は,ソプラノとオーケストラのための『環礁』が収録されているので買い求めたものだ。
無調音楽の文法不在のような音響にあって,武満の音だなあと感じるのはどこにその理由があるのか。大岡信のテクストと相俟って,古典的な奥床しさと現代の研ぎすまされた知性とを感じる。神秘的でさえある。