日本代表がロシア・ワールドカップで 16 強に進出した。ありがとう! おめでとう!
ポーランド戦で 0-1 ビハインドのなか,コロンビアとセネガルの戦況を睨んで,最終ラインでのボール回しに始終し,警告も失点もなくそのまま試合を終わらせた。会場はブーイングの嵐。当然だろう。他力本願ながら,なんとフェアプレーポイントなどという聞いたこともない基準で警告数 2 ポイントでセネガルを上回り,結果的に突破を果たしたわけである。世界のサッカーファンの非難轟々のなか,実を取った。いいね。心をドライにして,「褒められる日本」というプロセスよりも,結果を取った。ここがいいね。
しかも,ポーランド戦で先発 6 人を入れ替えて,決勝トーナメントに向けて主力を温存したうえ,自信喪失していた川島に三度目の正直のチャンスを与え川島もみごとにこれに応えたわけで,いったいどういう計算をしたらこんな采配ができるのかと,半ば呆れるくらい西野さんの思惑は当たったといえる。いかに珍奇にみえようが,結果的に最高の状態で決勝トーナメントに臨めるわけである。
韓国は,なんと前回覇者ドイツを打ち破って大金星を上げ(凄ぇ!),世界の賞賛を集めているわけだが,2 敗が響いて,残念ながら,予選敗退となってしまった。で「韓国は美しく脱落,日本は醜く進んだ」などと韓国のスター選手が口にしている。バカめ。負け犬の遠吠え。「普段汚くかつつまらないテコンドーサッカーをしているのはどこのドイツだ? 同じくつまらないサッカーをしていてもフェアプレーポイントのおかげで日本が生き残ったのは,結果として凄いことじゃないか?」と,ま,こんなことを考えてしまった。
韓国のスター選手のみならず,海外のサッカーファンは「日本に失望した」というんだが,コロンビア戦,セネガル戦,ポーランド戦の順番が逆だったら,おそらく評価は真逆になっていたと思われる。これは,いい人だと思っていた人のウラを見せられて,その人の評価を悪い人に倒してしまう子供じみた見方である。オモテもウラもみて総合的に物事を判断するのが大人である。ま,「日本に失望した,ベルギーにぼこされればよい」なんて抜かす奴らに対して,「バーカ」と心のなかで罵りたくなる俺はダメ人間ですかね? ことほど左様に,ワールドカップにおいてベスト 16 に残ることの凄さがわからないバカは放っておこう!
今回の日本代表は,大会直前の監督交代,代表選考での年寄り偏重,強化試合でのゼロ敗で,批判ばかり浴びて来た。強化試合後のインタビューでの西野監督の取り繕うようなぱっとしないコメントにも,自信のなさばかりが印象付けられた。ところが,フタを開けたら,強豪コロンビアに 2-1 で勝ち,アフリカの最強国セネガルに 2-2 でドローと,誰も想像しなかった結果を残す。そして,敗北しつつも計算された予選突破。正直,今も,俺は信じられない。
6/20 未明からこの 10 日間,日本列島が久々に明るい話題で持ちきりとなった。「西野さん,本田さん,ごめんなさい」の掌返しがキーワードとなった。モリカケのクズネタでいい加減テレビを見る気がしなくなっていただけに,やっと受信機が意味のある装置になったのだ。ま,テレビのニュースバラエティは,「大迫,半端ないって」のルーツだとか,高校時代の乾選手のセクシーフットボールがどうのこうのとか,渋谷交差点が凄いことになっているとか,頭の悪い話題にばかりフォーカスしていて,相変わらず呆れさせられる次第なわけだが。
コロンビア戦。日本代表の攻守のハードワークに感動した。ハードワークがもたらした勝利ということにつきるのではないか。決勝点をあげた大迫がみごとだったけど,俺的には長友,原口,乾の死を覚悟しているかのような守備の凄まじさにこそ,「これこそ日本人の戦い方だ」と感銘を受けた。くらだないミスに呆れもしたが,いや,いい試合を見せてくれたと嬉しかった。
それでも,香川が PK を前にボールを持って放さなかった姿にいちばんの感動を覚えた。彼が PK を外して敗れたアジアカップの記憶がまざまざと蘇ってきたわけで,それはいちばんに香川自身の脳裏を支配している思いだと考えるにつけ,「オレが蹴る」という強い意志を彼に見せつけられ,こういう緊張した大舞台で人生のリベンジにかける彼の思いをひしひしと感じ,なんてかっこいい男かと涙が出て来た。こういうのをドラマだというのだ。
セネガル戦では,ハードワークとポリバレントサッカーに感銘を受けた。
西野監督が代表選手選考で「ポリバレントな選手を」と言ったとき,俺はポリバケツでリフティングができるような選手のことかと思った。そりゃ凄いわいと。中島翔哉にはそれができないってか?
セネガル戦を観ていて,後半,セネガルが 4-2-3-1 から 4-3-3 に布陣を変えてきたとき,日本もそれに対してびっくりするくらいの対応をしていたのが,すごく印象的だった。長谷部がセンターバックのポジションに下がりスリーバック気味の布陣を形作ることが多くなり,香川も下がって守備にケアをしつつサイドの選手が前後に流動的に動き,空いた中盤のスペースを柴崎が動き回ってタテに仕掛ける。
この形でセネガルを苦しめたわけで,こういう状況に応じた戦い方ができることをポリバレントというのかといまさらながらに納得させられた。2014の「自分たちのサッカー」ではなく,相手に応じたサッカー。そういうことかと。
今回日本代表は,ガーナ代表,スイス代表にそれぞれ 0-2 で敗北,ワールドカップ出場を逃しサブ中心のパラグアイにやっと 4-2 で勝利して,ロシア入りした。期待感ミニマムのなかにも一縷の光明を抱きながら,サポーターも固唾を吞んで代表の試合を見守った次第だが,報われた。ほんと,ありがとう,おめでとう,である。
俺的には,グループリーグ三試合でいちばん光った日本代表は,柴崎岳かな。ボランチで起用されて,攻守の切り替えのスイッチになり,タテのフィード,ナカへのクロスでピカイチだった。凄い選手がいたもんだと驚きだった。どうしていままで代表のなかで目立たなかったのか,ホント,不思議だった。
ベストエイトを賭けた決勝トーナメント初戦は FIFA ランキング 3 位のベルギー。対戦相手のあまりの強さにちょっと笑ってしまうんだが,ま,日本はハードワークして正々堂々と闘ってほしいというしかない。それにしても。ポルトガル,フランス,ベルギー,スペイン,ロシア,クロアチア,デンマーク,スウェーデン,スイス,イングランド,ブラジル,ウルグアイ,コロンビア,アルゼンチン,メキシコ。こいつらといっしょに,トーナメント表にわが日本が名を連ねているのである。あのオランダも,イタリアもいないだけに,なおさら,ただひたすら,凄い。