地味だけどちょっと気になる,ちょっと心に残る,そんな映画を観た。『惑星のかけら』2011 年,吉田良子監督・脚本作品。柳英里紗,河井青葉,渋川清彦主演。
家族の崩壊。そうして,人とのつながりを求めて夜の渋谷を彷徨する少女。かつての恋人をストーカーするナルコレプシー(突発性睡眠症)の男。少女はそんな彼が気にかかりあとをついて行く。彼にストーカーされる女は,それを半ば楽しみながら渋谷の夜の男たちと遊び歩く。
それぞれがまったく別の方向を向いていて,なおもその壊れた人間関係にとらわれて生きている。あるとき突然壊れた世界の表象をユーモラスに表現したテーマ曲 — 『まるで世界』(作詞:別役実,作曲:池辺晋一郎) — がこころに響いた。まるで〜のよう — つまり,実際は〜ではない,という感覚なのである。この世界はもう現実感を喪失し,どうしようもなくバーチャルである。
朝目が覚めたら 世界が変わっていた
空は青くて まるで空みたいだったし
雲は白くて まるで雲みたいだったし
爽やかな風だって まるで風みたいに吹いてるんだ
母さんにおはようと いったら
母さんもおはようと いった
父さんにおはようと いったら
父さんもおはようと いった
まるでぼくの母さんと父さんのように
どうしちゃったんだ世界は まるで世界みたいじゃないか
おーい
朝目が覚めたら 世界が変わっていた
歯を磨いたら まるで歯みたいに磨けたし
顔を洗ったら まるで顔みたいに洗えたし
あくびしてみても まるであくびみたいな気分なんだ
母さんにどうしたのときいたら 母さんもどうしたのときいた
父さんにどうしたのときいたら 父さんもどうしたのときいた
まるでぼくの母さんと父さんのように
どうしちゃったんだ世界は まるで世界みたいじゃないか
おーい