いまどき日本で漢詩を作りたいと思う人はどれだけいるだろうか。ただでさえ本を読む人が少ないともいわれる昨今,俳句・短歌は趣味として定着しているにせよ,詩の愛好家は少数派である。さらに,漢詩を為す者となると,絶滅危惧種かも知れない。大正時代までは新聞に ー 現在,俳句・短歌についてあるような ー 漢詩投稿欄があったほど盛況だったにもかかわらず。それでも,さすがに偉大なる中国詩の伝統はわが国の学校国語教程の一環で学ぶ項目であり,李白・杜甫などの詩は人口に膾炙しているし,漢詩の作り方を解説した書籍もいくつも出版されており,数は少ないが漢詩を詠んでみたいと思う人もそれなりには - 少なくとも,漢詩作成解説本の売れた部数程度は - 存在する。
形式としての詩
私もそんな一人であった。しかしながら,漢詩(ここでは絶句・律詩の近体詩を指している)を作る場合,その平仄音韻規則に準拠すること自体が,漢籍の素養を失った現代の日本人にはきわめて高い敷居となっていて,ヘタな詩云々の前にまず形を為すことすらが難しい。詩とは,音韻規則等からなる形式に適っていることがその第一条件である。漢詩近体詩はとくに規則にうるさい。
俳句,短歌も,五七五の音節数を基本とする形式に準拠しているからこそ詩になるのであって,五七五そのものが「日本語としてそれがもっとも美しく聞こえる」などという感覚論からでなく,ただそうでなければならないという形式的「決まり」に沿っていることで,詩の認識を読者に喚起しているに過ぎないのである。西欧の詩の読み手も,一篇の詩を前にして,scansion スキャンションといって,韻律は何かをまずは検討する。弱強格の四脚韻のイアンボスだ,アレクサンドランのソネットだ,というような形式を特定したあとで,はじめて意味を探るのが常である。そしてその形式に基づく過去の詩,詩句の伝統的重層を想起しながら,目の前の詩のことばの真意を考え,鑑賞・評定するのである。古典詩の詩たる所以は,どこの国・言語のものであっても,形式と切っても切れない関係にある。
形式の要素をおろそかにし,詩の美点を「感性」などという感覚論で一括りにする者は,詩とは何か,文学伝統とは何かについて,究極において目の前の詩について,まったく何もわかっていないというべきである。「感覚・感性」を働かせて「なんとなくいいなあ」と,詩の表現の表層的意味に溺れているに過ぎない。そして,こうして,形式と詩句のシステムとして捕らえるべき詩というものに対し,独善的解釈を犯す。
漢詩作成支援ツールの考え方
漢詩は中国語のことばの単位である漢字の平仄,四聲という字韻と句の字数との構成によって成立している。そしてその構成規則がある。漢字はそれぞれ音韻をもっており,詩で用いられる概念として四聲というものに分類される。平聲,上聲,去聲,そして入聲である。四聲はそれぞれさらに細かく系列が分かれており,漢詩の伝統においてこれらは百六の韻目として整理されている。この体系を平水韻という。四聲は平聲とそれ以外に大別され,前者を平(韻),後者を仄(韻)とする。そして,この平仄の文字の並びの音韻規則こそが,漢詩の文字構成の要諦である。便宜上,平に属する文字を○,仄に属する文字を●の記号で表現することが多い。
自分の思う文字の列が対象とする詩形式の音韻規則に適合するかどうかは,ある程度計算機でチェックできる。日本人にとって困難なこの規則適合性を,文字を勘案するつど機械的にチェックして見直してゆく創作ができれば,漢詩作成のかなりの労力が軽減できるはずである。そういう発想で,私は misima 漢詩作成支援・平仄音韻分析プログラムを書いた。そのために,漢字の平仄を蓄積したデータベースを構築し,漢字の平仄を調べるプログラムを書いた。漢詩は詩語の伝統抜きには考えられないため,漢詩愛好家から提供していただいた詩語データをもとに詩語データベースを構築し,その詩語検索プログラムも書いた。
そして,このプログラムを活用して,これまでいくつか漢詩(七言絶句ばかりだが)を書いた。今日は,自分も漢詩を作ってみたいと思う方のために,漢詩作成支援を使いながらどのように実作をするかという実例をメモしておく。
私は漢詩を作るに当たって,漢詩の規則を上記ツールの検査ロジックに実装した関係で,漢詩規則そのものを解説した書籍を座右に置くことはない。やはり,四聲,字訓を調べるために漢字字典をもっとも頻繁に参照する。そして,日本語の思考に基づき字を造ると漢詩として意味が通じなくなる可能性があるため,漢詩のことばとして相応しい漢字を探るために,日中辞典をも調べる。この方法を誰かが推奨しているわけではないが,漢詩はそもそも中国語詩である以上自然なアプローチではないかと私は思う。
構想
昨年秋,『秋思』なる七言絶句を作った。ある九月下旬の夕方,仕事を上がって,虎ノ門・特許庁舎の前を通りかかったとき,どこからか金木犀のほのかな香りが漂って来て,このビル群のどこから来るのか立ち止まって周りを見回した。このとき,なぜかロシアの象徴派詩人・アレクサンドル・ブロークの詩の断片をふと思い出した。黒衣聖母の化身のような,謎めいた女人の姿が目に浮かんだ。
Ты проходишь без улыбки,
Опустившая ресницы,
И во мраке над собором
Золотятся купола.
おまえは微笑むこともなく
通り過ぎようとする まつげを伏せ
そして伽藍の上の暗闇に
円蓋が金色に光る
秋の黄昏の金木犀の芳香と,睫毛を伏せて思い詰めたように詩人の前を通り過ぎる,世紀末の哀愁を帯びた女の表象とが,胸に迫って痛かった。この印象を漢詩の形にしたいと思い,帰途,歩きながら,混雑する電車に揺られながら,ことば,否,漢字を探った。アレクサンドル・ブロークに寄せた秋の思い。七言絶句『秋思』としよう。
秋,黄昏,金木犀,香。起承句ではこの私自身の目の前の情景を書く。かつては与えてくれただろう微笑もいまはなく,目を伏せて通り過ぎる女。伽藍から見上げる円蓋が夕日に輝く啓示的瞬間。このブローク詩の翻案を転結句にフィーチャして,あの痛い哀愁を叙景として定着させたい。漢詩の一句(一行)七言の論理的纏まりは四字(二字+二字)+三字であり,これらの表象を二字,三字の断片で整理して,ことばを定着させてゆく。
文字を推敲するつど misima 平仄音韻分析・平仄音韻チェックを行い,七言絶句としての規則に合致しているかを確かめる。求める平仄をもつ文字,詩語を探索するために,漢字検索,詩語検索を活用する。
起句
秋の黄昏に金木犀の芳香が漂って来る情景。清秋黄昏金木犀……。これでは,平仄は○○○○○●○となり,二四不同(二字目と四字目の平仄が同じであってはならないという規則)にも,二六対(二字目と六字目の平仄が同じでなければならないという規則)にも反している。二字目の秋○(平字)にこだわるのなら,昏○のところは●(仄字)になるようにしなければならない。そこで黄昏○○を薄暮●●とすると,平仄の並びが○○●●○●○となって,二四不同を満たす(まだ二六対を満足していない)。
ところで,金木犀だけじゃ,なにがなんだかわからない。金木犀の香りがキーなのだ。「キンモクセイ」を小学館『日中辞典』で調べると,中国語では「丹桂・金桂・銀桂」とある。ここでは思い切って桂とする。桂香微ナリ(平仄は●○○)。清秋薄暮桂香微。○○●●●○○。
これで,二六対規則をも満たし,一句の構成として規則違反はなくなった。でも,「清い秋」というのも捻りがない(清秋はよく使われる詩語なのだが)。雨が上がった夕暮れの濡れた風情のほうが,金木犀の香りがより引き立つと思い,清秋を霽秋に変更。霽秋薄暮桂香微 ー 霽秋(セイシュウ)ノ薄暮(ハクボ)桂香(ケイコウ)微(カスカ)ナリ。平仄は●○●●●○○。二四不同,二六対ともに問題ない。これを起句としよう。
これで同時に,詩格が決定する。二字目と押韻字(七字目)に平字が配置されると,ほぼ必然的に平起式平韻正格の七言絶句となる。その平仄スキーマは次のとおり。
◐●◐○◐●◎
◐●◐○○●●
◐○◐●●○◎
押韻は微の字韻となる。すなわち上平聲五微に属する文字によって,二句,四句の七字目を一貫させなければならない。ここで,漢字検索機能を用いて,上平聲五微の文字から,使用する漢字の候補を挙げておこう。漢字検索画面の「韻目」で「hk:05:微」を選択して検索し,該当する漢字の一覧を調べる。もしくは,「韻字」に微を入力することでこれと同韻の文字を調べる。ここでは,ブローク詩を栽ち入れるべき前哨として秋の暗い情景を強調したい。一覧から幃(とばり)ー 宵の暗い幃をまず選択。暉煇輝(いずれも,「かがやく」意)字があり,ブローク詩の「金色に光る」に相当するクローズ表現部でまさに使えそうだ。
承句
承句は先ほど検討したように秋の暗い情景を強調し,暗い幃に描く絵を考える。すぐ,コウモリの ー 家路の途中で不吉に舞っていたのだ ー 目で追うのも難しい,乱舞して飛ぶ姿を思い描く。コウモリが暗い幃に紛れて舞い飛んでいる。蝙蝠飛空紛暗幃 — ○●○○○●○。
二句目として,平仄の並びは問題ない。一句目の二段(二字目)が平○ならば二句目・三句目の二段を通常仄●にしなければならない。そして,四句目・二段を再び平○とする。しかし,飛字の字韻が上平聲五微であり,冒韻(押韻字と同じ韻目の文字をそれ以外のところで用いるという規則違反。飛は押韻文字微と同じ韻目の上平聲五微に属する)となる。空を飛ぶというのもベタである。翻虚(虚ニ翻ル)と推敲する。
また,日本語から直に造った紛(れる)という字も,こまごまとしたものが入り乱れている様を想像させる。暗闇のなかでコウモリの姿が不分明な様子を示すには,混(じる)というほうがより適切に思われる。蝙蝠翻虚混暗幃 — 蝙蝠(ヘンプク)虚ニ翻リ暗幃(アンキ)ニ混ズ。平仄○●○○●●○も問題なし。
転句
さて,転結句はブローク詩の翻案を裁ち入れる字句の検討となる。転句に睫毛を伏せた謎めいた女を登場させ,結句は,起承句の金木犀の香る暗い時候的情景と,転句の内向きの浪漫的人事とを総合しつつ,それと対照になる心象風景ともなる,宗教的雰囲気に満ちた輝く秋の情景で結びたい。
女は微笑むことなく睫毛を伏せて通り過ぎる。女,無微笑,伏睫,過。女無微笑伏睫過。かつて見せたであろう微笑のいまは無いこと ー この表現を後ろにもっていったほうがよさそうである。伏睫過女無微笑。平仄は●●◎●○○●。
このとき,女●仄字の位置は○平字でなければならない(二四不同規則)。また,微○平字の位置は●仄字でなければならない(二六対規則)。さらに,微字は冒韻,同字重出(同じ文字を二回以上使用すること)を犯すので使用できない。よって,女●を嬢○に,無微笑(微笑ナク)を無泛咲(咲ミヲ泛カブルコトナク)に訂正する。「わらう」はもともと「咲う」であるから(女優・武井咲の名前を「えみ」と訓じさせるのは,彼女の名付け親の教養を感じさせる)。
ところで,伏という字は,ネジ伏せるもしくは地べたに寝そべる感じを与える。これを嫌い,「頭をうつむける」意のある俯字に変えることにする。俯睫過嬢無泛咲 — 睫(マツゲ)ヲ俯(フ)セテ過グル嬢(ジョウ)ハ咲ミヲ泛カブルコトナク。平仄を確認すると●●●○○●●。misima 平仄音韻分析は過字を◎,すなわち平仄両韻文字(去聲二十一箇及び下平聲五歌)であると報告するが,ここでは平仄不問の位置に置かれているので平仄どちらでも可である(「通過する」というここでの意味では●仄韻・去聲二十一箇)。音韻分析結果は問題なし。
結句
最後の結句である。素直にゆくと,伽藍,暗闇,円蓋,金色,輝(押韻字)のような字句から構成することになる。暗闇は,詩の前半ですでに暗さを強調しているので,ここでは余計である。伽藍円蓋金色輝 — ○○○●○●○。んー。あまりにブロークの詩句の翻訳そのままで捻りがない。色●仄字の位置も,二六対規則に従うと○平字に変えなければならない。さらに,下三連(句の末尾三文字が同じ平仄となる禁則)を避けるために,金○平字も●仄字に入れ替えなければならない。
ここでは,秋の金木犀の香り,暗闇に立ち上る輝きの色に,音の要素を入れよう。秋の黄昏に長く音を引く晩鐘を思いつく。一方で,金色の輝きという西欧詩の紋切型を退けて,日本の秋の茜色に変えよう。でもって,伽藍,円蓋も寺院の塔に変容する。晩鐘長引塔茜輝。平仄は●○◎●●●○。
これだと,茜●仄字が二六対を犯す。「あかね」「あか」と観念連合する○平字を探す。学研の『漢字源』漢字字典の訓「アカ」の索引から,彤を探り当てる。平仄は都合よく○上平聲二冬である。さらに,燃えるような赤の味わいを出したいと思い,輝字を煇に変える(ちょっと気取り過ぎか)。
考えてみれば,長引という二字は日本語をあまりにベタに宛てたもので(引は弓やモノを引っ張るという手の動作を示すものである),鐘を長い綱かなんかで引っ張っている感じがして,失笑を催す。溢れるような鐘の響きが少しずつ尾を引くように消えてゆく情感を現す二字を考える。このとき二文字の平仄の並びは,○●もしくは●●でなければならない。ここで,『秋思』創作で,いちばんの時間を掛ける。字を考え捏ねくり回した末,横溢する,水が広くひろがる・豊かな様の意の汪字と,船の水跡を引きながら航行する「曳航」の曳字の発想から,汪字に添わせるによかろう,さんずい付きの洩字(のびる,長くのびる,長く尾をひく)を置くことに。起句の霽秋にある,雨上がりの濡れのまだ引かない情景とも響き合うではないか。
晩鐘汪洩塔彤煇 — 晩鐘汪(オウ)ト洩(ヒ)イテ塔ハ彤(アカ)ニ煇(カガヤ)ク。平仄は●○○●●○○。音韻チェック結果も問題なし。
下図に最終形の詩テキストを misima 平仄音韻分析で解析した結果を示す。
misima 平仄音韻分析解析結果
完成形
こうして出来上がった七言絶句の完成形は以下である。書下し文の字韻表記は旧仮名遣いとしてある。現代語訳も添えておく。
秋思 — К Александру Блоку, Sept. 29, 2014.
霽秋薄暮桂香微霽秋 ノ薄暮 桂香 微 ナリ
蝙蝠翻虚混暗幃蝙蝠 虚 ニ翻 リ暗幃 ニ混 ズ
俯睫過嬢無泛咲睫 ヲ俯 セテ過 グル嬢 ハ咲 ヲ泛 カブルコトナク
晩鐘汪洩塔彤煇晩鐘 汪 ト洩 イテ塔 ハ彤 ニ煇 ク
雨の霽れた秋のたそがれ 金木犀が微かに香ってくる
蝙蝠が虚空に翻り 暗いとばりと混ざり合う
女は 睫毛を伏せ 微笑みを浮かべることもなく 通り過ぎる
晩鐘が溢れるように長く音を曳いて 寺院の塔は 朱に輝く
平仄スキーマは以下のとおり。
○●○○●●◎
●●●○○●●
●○○●●○◎
- 押韻字: 微・幃・煇(韻目: 上平聲五微)
文書化
最後に,漢詩をそれらしく電子文書にして,印刷して眺めても楽しめるようにする。日本の伝統マナーに従って漢籍の文書を作成するとなると,私はやはり LaTeX をお勧めする。藤田先生の開発した縦組パッケージ sfkanbun.
この『秋思』は自作漢詩文集『狂溟集』にも収録してある。
% -*- coding: utf-8; mode: latex; -*- % 秋思 — アレクサンドル・ブロークニ寄ス,『狂溟集』 % 2015(c) isao yasuda, All Rights Reserved. % $Id: 20140929-shushi.tex 30 2015-11-09 11:11:09Z isao $ \documentclass[12pt,b5paper]{tarticle} \usepackage[T2A,T1]{fontenc}% \usepackage[russian,nippon]{babel} \usepackage{okumacro}% 奥村先生マクロ (マクロ名重複のため sfkanbun.sty より前) \usepackage{sfkanbun,furikana}% 漢文訓点・縦組振仮名パッケージ(藤田先生) \usepackage{plext}% pTeX 縦組拡張 \usepackage{pscyr}% PSCyr Cyrillic fonts \usepackage[osf,swashQ]{garamondx}% Garamond fonts \usepackage[deluxe,expert,multi,jis2004,burasage]{otf}% OTF 和文(齋藤氏) \newcommand{\saku}[3]{\normalsize #1 #2, #3.}% \nenewcommand{\bfdefault}{bx}% % PSCyr Academy 書体を若干大きく \DeclareFontFamily{T2A}{fac}{}% \DeclareFontShape{T2A}{fac}{m}{n}{<-> s * [1.1] facr6a}{}% \pagestyle{empty} \begin{document} ~\par \begin{kanshiyomi}{10zw}{24zw} \daisakushai{秋思}% {\hfill {\normalsize\selectlanguage{russian}\acfamily\CYRK{} % \CYRA\cyrl\cyre\cyrk\cyrs\cyra\cyrn\cyrd\cyrr\cyru{} % \CYRB\cyrl\cyro\cyrk\cyru.} \saku{Sept.}{29}{2014}} & \Kana{秋,思}{シウ,シ} \—— アレクサンドル・ブロークニ寄ス\cr % 霽秋薄暮桂香微 霽秋ノ薄暮 桂香 微ナリ % 蝙蝠翻虚混暗幃 蝙蝠 虚ニ翻リ 暗幃ニ 混ズ % 俯睫過嬢無泛咲 睫ヲ偃セテ 過グル 嬢ハ 咲ヲ泛カブルコトナク % 晩鐘汪洩塔彤煇 晩鐘 汪ト洩イテ 塔ハ 彤ニ煇ク 霽\kundoku{秋}{}{ノ}{}\CID{13977}暮桂香\kundoku{微}{}{ナリ}{} & \kana{霽秋}{セイシウ}ノ\CID{13977}暮 \Kana{桂,香}{ケイ,カウ} % \kana{微}{カスカ}ナリ \cr 蝙蝠\kundoku{\CID{14040}}{}{リ}{レ}\kundoku{\CID{13336}}{}{ニ}{}% \kundoku{混}{}{ズ}{二}\CID{13638}\kundoku{幃}{}{ニ}{一} & \Kana{蝙,蝠}{ヘン,プク} \kana{\CID{13336}}{キヨ}ニ\kana{\CID{14040}}{ヒルガヘ}リ % \Kana{\CID{13638},幃}{アン,キ}ニ混ズ \cr \kundoku{俯}{}{セテ}{レ}\kundoku{睫}{}{ヲ}{}\kundoku{\CID{13669}}{}{グル}{}% \kundoku{孃}{}{ハ}{}\kundoku{無}{}{ク}{レ}\kundoku{泛}{}{}{レ}% \kundoku{\CID{13788}}{}{ヲ}{} & \kana{睫}{マツゲ}ヲ\kana{俯}{フ}セテ \CID{13669}グル 孃ハ % \kana{\CID{13788}}{ヱミ}ヲ\kana{泛}{ウ}カブルコトナク \cr \CID{13377}鐘\kundoku{汪}{}{ト}{}\kundoku{洩}{}{イテ}{}\kundoku{塔}{}{ハ}{}% \kundoku{\UTFM{5f64}}{}{ニ}{}\kundoku{\CID{08541}}{}{ク}{} & \CID{13377}鐘 \kana{汪}{ワウ}ト\kana{洩}{ヒ}イテ 塔ハ % \kana{\UTFM{5f64}}{アカ}ニ\kana{\CID{08541}}{カガヤ}ク \cr \end{kanshiyomi} \vspace{2zw} \begin{quote} 雨の霽れた秋のたそがれ 金木犀が微かに香ってくる\\ 蝙蝠が虚空に翻り 暗いとばりと混ざり合う\\ 女は 睫毛を伏せ 微笑みを浮かべることもなく 通り過ぎる\\ 晩鐘が溢れるように長く音を曳いて 寺院の塔は 朱に輝く \end{quote} \hfill\copyright\ \raisebox{0.3em}{2012--2014, \textit{isao yasuda.}} \end{document}
参考文献
misima 漢詩作成支援・平仄音韻分析プログラムの漢詩規則ロジックの実装で参考とした書籍,漢詩作成時に私が必携としている辞典,韻書を挙げておく。
『漢詩詩語辞典』の著者・菅原さんは,長年に渡って蒐集した詩語集を惜しみなく misima 詩語検索用データベースのために提供してくださった方である。心底,深謝したい。それにしても漢詩創作の必携とも言える浩瀚な詩語集を,現代人にとってわかりやすい形式で出版してくれた方が,専門的漢詩研究者ではなく,本業が税理士・行政書士の菅原さんであることは,現代日本の漢詩事情を象徴している。このような多大な労苦を厭わずせっせと詩語集めの成果を公表してくださった菅原さんには,そのへんの漢学者の仕事など金もらっていったい何やってんだかと呆れさせられるほど,感謝と尊敬の念を覚えてしまう次第である。