世にふるも… Shostakovich Symphony 5

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週末は小春日和だったのに,今日は朝からずっと時雨が降り続いて寒い一日だった。世にふるもさらに宗祇のやどり哉 — 芭蕉。

二時間ほど残業したあと,雨の侘笠 — 芭蕉の旅の笠ならぬ,ただの安ビニール傘 — に隠れポケットに手をつっこんで,携帯 LISMO でショスタコーヴィチの五番のシンフォニーを聴きながら,車のヘッドライトが寒々と路面に照り返す渋谷を歩いた。ベルナルト・ハイティンクの指揮,アムステルダム・コンセルトヘボウの管弦楽による,私にとって最高の名演である。

芭蕉はこの句について「ふたたび宗祇の時雨ならでも,かりのやどりに袂をうるほして」としるしている(『渋笠ノ銘幷序 芭蕉翁』— 支考編『和漢文操』所収。『芭蕉集 — 古典俳文学体系・第五巻』集英社,1970年,568頁)。時雨のやどりは漂泊の侘びをすみかとする風雅のこころ。

帰宅して,今度はアナログレコード(1982 年,LONDON 国内盤)で,このショスタコーヴィチの憂愁の交響曲に耳を傾けた。時雨が身に沁みるような寂寥。いや,面倒な仕事にかかずらっていま気分がブルーなだけである。

 
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番「革命」&第9番
ベルナルト・ハイティンク (Dir)
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
ユニバーサル ミュージック クラシック (2013-05-15)