東アジア杯

東アジア杯は,男子が日本の,女子が北朝鮮の優勝で終わった。女子北朝鮮優勝には文句の付けようがないけれども,男子日本の優勝は意外だった,というのが正直なところ。日本代表を応援する立場として,今大会は不満が多い。

なでしこの凋落は決定的だった。なでしこは今大会を見る限り世代交代に失敗した感が強い。2011 年ワールド杯優勝のころからなでしこは,前線からのプレスの激しいチームに弱く,浮き足立ってパスミスをしてしまい,中盤が混乱してパスサッカーが成り立たない,という弱点があったが,今回の東アジア杯ではそれがいよいよ如実に出てしまった。若い選手はミスを連発し,年寄り選手は足が止まり,中国戦以外は見ておれない試合内容だった。ただ大儀見選手「だけ」が存在感を示すばかりだった。岩渕選手がいまだに安藤選手を越えられないありさまを見せつけられ,残念だった(岩渕はまだ二十歳だから,これからではある)。経験豊富なベテランを揃えたにもかかわらず,プレーの質・結果ともに若い韓国・北朝鮮チームに破れたショックはあとを引きそうである。五輪が終わった時点でメンバーの組み替えを大胆に試みるべきだった,という悔いが残る。なでしこがかつての女王・中国のようになりそうで怖い。

男子日本の優勝も,オーストラリア,韓国が弱過ぎたゆえの感がある(超格下のはずの中国とのドローゲームは,「事故」以上の何かであって,お話にもならなかった)。オーストラリアは守備が日本以上にお粗末だったし,攻撃の迫力もまったくなかった。それでも 2 失点してしまう日本のヘボな守備が情けなかった。日本戦では実力以上の気迫を示す韓国代表は,序盤から前へ前への怒濤の攻撃を続け,見た目には韓国の一方的な試合に見えたわけだが,その実,ゴール前での単調かつ力任せのプレーでゴールの臭いがまったくしない哀れなサッカーを繰り広げるばかりだった。ミドルシュートによる韓国の 1 点はたまたま出ちゃった芸術的なシュートがたまたま決ってしまったに過ぎない。それだけに,どうぞ打って頂戴といわんばかりにフリーにしてしまった栗原,山口蛍のボケーっとした守備がいよいよ情けなかった(それでなんで蛍くんが MVP なのかまったく理解できない。韓国開催で韓国チームに唯一のゴールを与えたからか)。ま,五輪でやられたあの「ロングボール蹴り込み・アンド・体格にモノ言わせてゴール」というつまらないサッカー(私はこのくだらない,醜いサッカーをゴーカン〔豪韓〕サッカーと言っている)に対し,今回の日本代表が持ち堪えて勝利したところ,修正能力のあるプロフェショナリズムを感じさせられて溜飲が下がった。

やっぱり柿谷くんは天才だった。韓国戦の 2 ゴールともに「ジーニャス!」と吼えさせられた。なんでこんな才能がこれまで五輪にも,ワールド杯アジア予選にも呼ばれなかったのか。不条理ですらある。そして,決定力の決定的不足に悩む大迫くんもオーストラリア戦で 2 ゴールを上げ,元・天才ぶりを発揮してくれた。また,わが川崎市幸区鹿島田の天才・齋藤学くんも凄いドリブルから凄いループシュートでゴールを上げてくれた。この三つだけが今回の東アジア杯で私の満足したところ。代表に残るのは,柿谷選手,あと,豊田選手だと私は思います。あとはちょっとなあ。流れるように相手を崩す美しいパスサッカーも,組織的攻守の切替えも,まったく見られなかった。急造チームだから仕方ないか。ザッケローニ監督が「海外組」中心にメンバーを固定して来た理由がよくわかった。つまんね。ま,今回の「国内組」だけの代表チームはニューフェースの試験だ,と言い切ったザッケローニ監督にとっては,実りある大会だったと信じたい。

う,,,なんだかんだ言って,男子初優勝! うれしい!! 山口蛍,青山,森重,高萩,山田の各選手も楽しみな選手であることに変わりない。次の 8 月のウルグアイ戦でどんな代表メンバーがどんなプレーを見せてくれるか,楽しみである。
 

[ 8.12 付記 ]

その後,東アジア杯優勝のニュース記事を見るにつけ,天才・柿谷の評価,代表定着への期待感がうなぎ上りになっている。もとより彼は実力では香川以上の才能であるにもかかわらず,精神的弱さから結果が残せず,四国に「飛ばさ」れ,この二年でようやく「安定感」のある活躍を見せはじめたところである。でも,柿谷が代表に「化学反応」(最近のスポーツニュースの記事が好きな意味不明の言葉)を起こすとの意見は,まだ早すぎる。ゆっくり成長を見守りたいというザッケローニこそ,きちんと彼を見ているというべきである。柿谷は一発でヒーローになりうる才能だが,それ以上にミスも犯すプレーヤである。思うに,もっと精度を上げないと,前田の代わりにはなりえない。

あと,プレイバックを見れば見るほど,考えれば考えるほど,今回の東アジア杯の日本代表チームはヘボ過ぎる。韓国戦・柿谷2ゴールでそれが一気に打ち消されただけである。それ以上に韓国・オーストラリアのプレーがヘボかったに過ぎず,総じてワールド杯アジア代表の名が泣くくらい,恥ずかしい。いまの新代表発掘の熱気は異常である。韓国に勝てばなんでもよいと思う愚かなファンが多すぎる。