安倍氏号外

今日夕方,新橋駅前で朝日新聞の号外が配られていた。「自民総裁に安倍氏」。なんでこんなつまらないニュースが号外になるのだろう。次の選挙で自民が勝つだろうから,次期首相が決定したも同じ,だから? 確かに,日本の決定的凋落の暗示というわけだ。号外の価値あり。

私の眼には,いまの日本は主治医に対して疑心暗鬼に苛まれたガン患者のようにみえる。本来ならガンを切除しなければならないのだが,切りたくないので抗ガン剤で凌ごうとする。それで病巣が小さくなることもある。ところが,なかなか病状が思わしくならないので,患者は主治医の手腕に大いに疑問を抱いている。こいつカネ儲けがしたいだけで,俺を食い物にしようとしているに違いない,と。それで主治医をクビにして別の主治医を雇う。ところがガンの進行は止められず,ガンの病巣以外にも,普天間基地という手が痛くなる,竹島・尖閣諸島という足が痛くなる。新しい主治医は手の痛みすら取り去ってくれない。「足の痛みはしようがない」と鎮痛剤でごまかす。「あなたの病いの根本はガンです。手や足はそっとしておいて,もっと大事なところを先ず直さなくては。ガンを切りましょう」。かくして,患者は次々に主治医を替えて,いまや数え切れない有様である。主治医の言うことがことごとく信頼できず,その一方でやっぱりガンは末期状態となり,1980 年代までに蓄えた財産はすっからかんになり,そのころの発明の特許権も 20 年が経過してすでに切れ,隣人がそれをタダで使って大儲けするのも癪に触り,主治医の群れを憎み,隣人を憎み,自分の借金生活の境遇を呪い,... そうして,不幸な死に方をしそうである。可哀想に,患者には弔ってくれる子供もいないらしい。借金は誰が返済するのか?

安倍さんはこれら何人も挿げ替えられたかつての主治医の一人である。しかも一度,突然「体調不良」との言訳めいた理由で自分から主治医を短期間で降り,患者の治療を抛棄した。治療のために命を抛つと言っていたのに? この主治医候補は今回こそ命を擲つと息巻いている。現在の主治医を信じられない患者は,何故か知らん,かつて自分を見捨てた医師をもう一度呼び寄せようとしている。懲りない医師にして,懲りない患者。この再登用は,筋骨隆々の古い友人にもう一度カマを掘らせることこそがガンに利くのだという,この主治医候補が昔から勧めていた民間療法に,もう取り付く島のない患者がまたもや魅力を感じつつあるかららしい。これで手も足も治ります,ってなもんや。足がいよいよ痛くなるだけかも知れないのに。カマを掘られてケツの穴 —「美しいケツの穴」— がますます穢されるだけかも知れないのに。

悲観的になるのはもうやめよう。返り咲いた安倍さんは「彼は昔の彼ならず」かも知れないし(言っていることは昔とまったく変らないところが,彼の懲りない証拠なんだけど)。

新橋のたばこ屋でゴールデンバットを買ってしまった。まだあるんだ,この銘柄。20 本入りで 200 円の両切りである。いつもはハイライトなんだけど,やはりたばこ代はバカにならない。喫煙の悪癖をやめよう。でもやめられない。まずくて安いたばこにひとまず問題回避的逃避とあいなりました。マーク・トウェインは「私はいつも禁煙している」と言って,禁煙と喫煙との間を数学的帰納法のように不断に往来していたそうである。帰宅して子供たちにゴールデンバットを見せてやった。反応は「お父さん,股間の金のバット振り回すの?」。悲観的になるのはもうやめよう。

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