体調がすぐれなかったり,仕事をする気力が萎えたり,コンサートの予定が入っていたりすると,仕事の状況を見極めた上ではあるが,私は仕事を放り出して帰ることがある。何日も徹夜させられるときもあるんだから,仕事が落ち着いているときは,たまに抛擲してもバチは当たらない。そうして,妻よりも早く帰宅する場合,洗い物をし,米を炊く。今日もそんな日であった。10 月 7 日,金曜日,晴れ。
妻の岩手の実家からよく米をもらう。家の田んぼで穫れたおいしい米である。梅雨から夏場にかけ,研ごうとして米の器に水を注ぐと,ウジ虫のような小さな幼虫がうじゃうじゃ浮いて来ることがある。健気にのたうつヤツ,まったく動かないヤツ,羽化しそうなヤツが,米の間から湧いて出て来る。調べたところ,これ,ノシメマダラメイガという羽虫の幼虫で,螟蛾の一種らしい。学名は Plodia interpunctella プロディア・インテルプンクテラ。今日も居たか。
気持ち悪い。妻は夏場,新聞紙に米を薄く延べ敷いて陽に干し,プロディアたちを取り除けたりしている。だけど,米にだって虫もつくわいな。美しい桜を咲かせる樹にもうじゃうじゃ毛虫がいる。美人の腹のなかにだって寄生虫がいる。どれだけ米を研いだところで,卵,幼虫をすべて洗い流すのは無理だろう。ヘンに神経質になると — 知らぬがゆえに神経質にならずにすむヤツがほとんどなんだろうけど — この世の中生きては行かれない。ならば,お前たち,食ってやる。プロディア・インテルプンクテラともども米を食うのは,タンパク質も摂取できてよいではないか。
食われずにすんだ螟蛾の成虫が舞い飛ぶのをときおり目で追いながら,子供たちも納得してうまそうにごはんを食べている。自然を食す,というのはこういうこと也...?