先日,Facebook でガリーナ・グリゴーリエヴァさんから東京カンタート合唱コンサートへのお誘いがあったのだけれども,残念ながら,別の用事のために行かれなかった。それでも,彼女から教えられていたニコニコ動画で彼女の合唱曲を聴き,感想を彼女に書き送った。喜んでくれた。彼女は,スミルノフの芭蕉俳句訳に付けた私の注解も読んでくれていて,激励してくれた。
その合唱曲 NOX VITAE(生の夜)のニコ動のリンクはここ:http:
NOX VITAE というタイトルから,私はこの合唱曲がロシアの詩人 Иннокентий Анненский インノケンティ・アンネンスキイ(1855–1909)の詩によるものと思い込んでいたのだけれど,違った。コンサートに行くかも知れず,あらかじめ詩を読んでおいたのだが,違った。アンネンスキイの詩 NOX VITAE をちょっと訳してみた。四韻脚弱強詩格である。人生の終焉に近づいた己が若かりしころを思い出してみても,懐かしいはずの夜の光景に疎外感しか認められない憂愁を歌っている。そしてそこにそこはかとない美(寒々とした月)を見出している。
インノケンティ・アンネンスキイの名声は日本ではほとんど知られていない。象徴派の次のアクメイズム詩人,アンナ・アフマートヴァやオシップ・マンデリシタームの魁だと評されている。彼は生徒から慕われた校長先生だった一方で,「デカダン詩人」を自認した世紀末詩人であった。けれども,頽廃というよりは世紀の黄昏の憂愁を衷心から切々と歌うといった詩風である。人を驚かす奇矯な表現はなく,古典的節度がより強い。輝き切れない色彩感に独特の魅力がある。
из кн. «КИПАРИСОВЫЙ ЛАРЕЦ» (1910) | 詩集『糸杉の手文庫』より (1910) |
Иннокентий Анненский |
インノケンティ・アンネンスキイ |
ТРИЛИСТНИК ПРИЗРАЧНЫЙ | 幻影のクローバー |
1. NOX VITAE |
1. NOX VITAE(生の夜) |
Отрадна тень, пока крушин Вливает кровь в хлороз жасмина... Но... ветер... клены... шум вершин С упреком давнего помина... |
木陰は快く まだクロウメモドキの血潮を ジャスミンの白い斑れに注ぎ込む⋯ なのに⋯ 風⋯ 楓⋯ 頂のざわめき かつての追憶が責めたてる |
Но... в блекло-призрачной луне Воздушно-черный стан растений, И вы, на мрачной белизне Ветвей тоскующие тени! |
なのに⋯ くすんだ月の幻光を浴びる ふわふわと黝い樹々の胴体 また お前たち 陰気な白光に 憂える木の枝の影! |
Как странно слиты сад и твердь Своим безмолвием суровым, Как ночь напоминает смерть Всем, даже выцветшим покровом. |
奇妙にも 庭と天空は融け合わさり 酷な無言をまもり 夜は万物 死を想い起こさせる 色褪せた覆いによってまで |
А всё ведь только что сейчас Лазурно было здесь, что нужды? О тени, я не знаю вас, Вы так глубоко сердцу чужды. |
ものみないましがたまで 碧かったのに それはもうどうでもよいと? 影よ 私はお前たちを知らぬ お前たちは私の心に深く深く疎ましい |
Неужто ж точно, боже мой, Я здесь любил, я здесь был молод, И дальше некуда?.. Домой Пришел я в этот лунный холод? |
まさか ここなのか 私が恋をした場所は 若かった場所は ここが終着?‥ 帰り来たということか この寒い月下の地に? |
Библиотека поэта. Большая серия,
изд. 3-е. Л., 1990, с. 111-112.
麻雀ゲームで字一色をツモってしまいました。こんなことやってっから娘から堕落してると言われるんである。