沖縄から見放される民主党政権

11 月末に行われる沖縄県知事選挙に民主党は候補者を擁立しないと決めたらしい(毎日新聞配信ニュース)。迷走する普天間問題で,沖縄県の民意(というよりは人気)と対米政策との矛盾の狭間で己の立ち位置を決められず,「勝負しない」ことにしたわけだ。これは,普天間問題で民意を問うことを放棄した,ということである。民主党が本当の意味で沖縄県を見捨てたということである。なるようになれ,と。このように「何もせず」事態の行方に委ねようとする不作為は,自民党ですら一度もやったことがない最低の姿勢である。中国漁船問題でもその不作為に呆れたが,民主党・菅政権はいまや,ホント,どうしようもない事勿れ主義権力だ。勝負すると負けるかも知れないので,勝負しないという体質(つい昨日 25 日,民主党は衆議院補欠選挙で負け,旧自民党政権の亡霊が生き返ったばかりである)。でも,この不作為は菅政権自滅への道を準備するだろう(というか,してほしい)。

この選挙の結果は,日米合意に従って辺野古に基地を移設しようという民主党・菅政権の思惑をいよいよ紛糾させるだろう。第一に,沖縄県民こそが民主党政権を見捨て,鳩山首相が沖縄県を訪問したころの「話は聞こう」という「期待」から「会いたくない」という「敵意」に態度を変えるに違いないからである。「裏切り」の不信感のなか果敢に沖縄入りした鳩山首相に対して,沖縄県民に敵意はなかった。一縷の望みを賭けて話だけは聞いたのである。それに対して,「鳩山前政権の決定事項」を振り回すばかりで,沖縄に自ら出向こうなんてこれっぱかしも考えない菅首相は,この沖縄放棄選挙を契機に,沖縄県民に敵意をもって迎えられるようになるはずである。第二に,沖縄県民の合意なくして基地を移設するのをもっとも望ましくないと考えているのはほかならぬ米国であって,不作為・菅政権に対する敵意が基地そのものに対する敵意にすり替わるのを怖れて,米国そのものが基地移設に尻込みをはじめるだろうからである。そうなるともう辺野古移設は絶望的になって,不作為・民主党は笑者になる。対米従属的右翼(「名辞矛盾」でないところがお笑いなのだが)からも,県外・国外移設派からも,米国からも疎んじられるようになる。要するに,子供手当て・高校無償化以外には,何もできやしないと。何もしないのだから。勝負しないのだから。まったく中国漁船問題と同じ構造である。嗚呼惟菅政権自滅而已。

普天間基地移設問題はクズ事案である。それは沖縄県を除く日本国民にとってはじつはどうでもよい問題だからである。「沖縄の海兵隊は抑止力」などという幻想(「抑止力」に実効性があるなら,まさに沖縄県内にある尖閣諸島海域にどうして愚連隊・中国漁船が英雄気取りで入って来るんでしょうか?)と自民党政権来の対米従属とに従って,普天間基地を辺野古に移設すべきだと主張する人たちは,沖縄県よりも米国のほうが大事だとあからさまに言っているのである。県外移設が紛糾するのは,他県が沖縄県の基地負担を引き受けることを忌避したいために,沖縄県に十字架を背負わせておけばよいとそっぽを向いているからである。沖縄県の痛みに日本全体で知らんぷりを決め込んでいる構造が明らかなのである。その不条理に対して関西空港への移設という具体案をもって声を上げたのは,橋下大阪府知事だけではないか。それはつまり,沖縄県がほぼ日本全国から「差別」されている証拠であって,普天間問題をクズ事案であると私が極め付けているのは,じつはこの事案が,差別とイジメとを善人顔でなす日本人の恥ずかしい国民性を象徴しているからにほかならない。全国紙マスコミも政権(民主党というよりは霞ヶ関)に迎合して,本事案について国民を面白がらせるネタにしかしていない。イジメを傍観しつつイジメる側に立ってこれを囃し立てるような下劣な行為である。
 

Post Scriptum

全国区的存在で大いに目立つ橋下大阪府知事は,その歯に衣着せぬ過激な発言で,事勿れ主義・民主党政権からそろそろ嫌われはじめるだろう。これまでの「政治主導」・中央省庁批判発言からも,霞ヶ関からはすでに蛇蝎のごとく嫌われているはずである。そこへもって来てこの「出る杭」が事勿れ主義・民主党政権から疎んじられるとなると,小沢さんの次は橋下さんではないか,と私はいたく心配している。そのうち橋下さんはとんでもないスキャンダルを捏造されるような気がしている。まず,大阪府の下っ端役人が関西空港経理不正絡みで大阪地検特捜部によって立件されとっ捕まる。その下っ端の「証言」からの芋づるで橋下さんが引っ張られる。マスコミ(産經新聞を筆頭に)が特捜部によるリークで橋下疑惑を大々的に書き立てる。そして「立場を利用した大悪党」と憤るわりには橋下さんがどんな罪で引っ張られたのか誰もわからない。それで「説明責任を果たせ」ということになる... ああ,そんな光景が目に浮かぶ。普天間基地移設問題が再燃し,橋下さんが再び関西空港への招致に言及するような事態になるとすれば,そのタイミングがいちばん危ないんじゃないか?

以上,まったく根拠がありません。

※ 10.28 付記

沖縄タイムスは『『沖縄の怒り爆発寸前』 普天間移設 英BBCが報道』で,「英BBC放送が沖縄の基地問題の深刻さや,日本政府が米軍普天間飛行場の移設を県内に押しつけようとするのは差別的な処遇だと県民が感じていることを報じている」との記事(10 月 22 日配信)を書いている。内容からすれば沖縄タイムスも BBC の報道を正当な見方だと見なしているといえる。まさに「差別」というキーワードがある。沖縄県民自身これを意識しているのみならず,BBC の分析にまでも反映しているわけである。だからこそ「怒り爆発寸前」なのである。

「県民の持続的な怒りのうねりは,鳩山由紀夫前首相が米国の圧力で普天間の県外移設を撤回したことで再燃していると分析」と記事にある。これによれば,鳩山さんのおかげで県内移設への怒りが増幅されてしまった構造が明らかである。この怒りがあるうちは米国は基地移設を躊躇せざるを得ないと考える限りにおいて,つまり鳩山さんの一連の行動は結果的に県内移設を抑止したということになる。うーん,鳩山さんはじつはこれを意図していたんじゃないか,と私なんかは感心するのである。

すなわち,紛糾させることがこの問題を沖縄県民にとっても,日本国全体にとってもいちばんよい方向に向かわせると。私は,普天間基地移設問題が解決しないうちに米軍がグァムに全面移転するだろう,に一票。間違っても,日本政府の「政治力」による解決はしないだろうってこと。