民主党代表選で菅さんが「圧勝」した。国会議員票はほぼ互角だったが,党員・サポーター票で大差がついたという。まあ,いいんじゃないんでしょうか。これからが菅総理の腕の見せ所なんだろう。このネジレ国会をどう運営して行くつもりなんだろうか。そのためには野党(社民党,国民新党以外)との連立をまじめに考えないといけないのに,この日本の危機的状況に超党派で腹を割って話せばわかる,なんて言っているこのナイーブな人(いい人なんだろうなぁ),野党時代に手前ぇがやっていたことをもうお忘れのようである。ネジレ国会で痛い目に会わさせられた自民党からすれば「超党派なんて,アンタに言われたくない」だろう。政治手腕とは良識に頼むのではなく,政敵がそうせざるを得ないような状況を作ることではないか。
小沢さんは今回敗れたわけだが,こういう点で菅さんの手腕の限界が見えているのも明白なので,次は菅内閣の「自滅」を待つという戦略に切替えたんじゃないだろうか。その前に検察審議会などというアマチュアたちによる「強制起訴」とやら — 素人芝居のような喜劇的法制度 — で捕まらなければよいけど。
わけもなく進む円高であおりを喰らう製造業・中小企業がばったばったと倒れ,日本振興銀行が破綻し,経済が深刻化し,結果的に雇用の門がさらに狭まりつつあるこの状況で,雇用拡大を掲げる菅内閣。小沢さんは投票直前の演説で「私はできもしないことをできるなんて言わない,しかし約束したことは必ず実現する」と語った。これは菅総理への痛烈なあてこすりである。菅内閣の自滅は時間の問題のような気がする。
尖閣諸島近海で中国漁船が日本の巡視船と接触し,中国漁船の船長が逮捕された事件で,にわかに日中の摩擦が起きている。日中両国のアホどもが騒ぎ立てている。こういう内外の雑音を日本政府は無視すればよい。「日中国交を断絶せよ」なんて言う,本当に救いようのない青臭いバカがいる。アンタたち,いったい誰に食わしてもらっていると思っているのか。アンタたちの親父の商売はどこかで中国と繋がっているのに,暢気だね。そういうのを「上に向かって吐いたツバが自分に降り掛かる」というのである。
うちの会社では総務部から,この事件に触発されるだろう中国での騒擾沙汰に関する注意喚起のメールが出た。いまや中国とのビジネスはどうあっても止めるわけには行かず,「注意」するしかない。日中貿易額は 2, 3 年前に日米貿易額を追い抜き,中国は日本にとって経済的にもっとも重要な国となった。中国貿易がなくなると,製造業の多くが倒産し,食物供給においてパニックが発生するはずである。今後のことを考えると,中米どちらに軸足を置くのか日本は岐路に立たされていて,中国を無闇に苛立たせるのは得策ではない。この問題に対し外務省は慎重に対処すべきである。
とはいっても,「領土問題」としてこの摩擦を捉えて対応するのは絶対にしてはならないと思う。尖閣諸島を巡って領土問題など存在しないのだから,日本は粛々と「領海侵犯」を犯した中国人を法で裁けばよい。「やりたい,やりたくない」でなく主権国家として「やるべきこと」を事務的にやりました。どんなに圧力がかかっても,これ以外の周縁的要因で,日本政府は中国政府に「配慮」する必要はない。領海侵犯をした民間人を,法に従って粛々と処理した — これだけを徹底すればよいと思う。どんなに中国政府から抗議を受けようと涼しい顔して受け流すだけにして,こちらからは何もアクションを起こさない — これがよいと思う。中国政府要人の来日が延期になっても「残念ですねぇ」で終わらせるのである。「時間が解決する」くらいでよい。日中経済関係は政府抜きでも民間でやって行ける。この最悪の事態。とにかく静かにしてくれ。
ところが,「領土問題」が何を意味しているか,どうやら何もわかっていない蓮舫議員は,「領土問題なので,毅然とした日本国としての立場を冷静に発信すべきで,感情論に陥るべきではない」などと浅はかな発言をしたらしい(讀賣ニュース『蓮舫大臣が不適切発言「尖閣諸島は領土問題」』)。「領土問題」があると認めた瞬間から「じゃあどうするか」の議論に引きずり込まれることが,この人にはわからないらしい。「領土問題」を認めることは,その領土の帰属がペンディングであることを自ら認めることなのである。そこから「議論」がはじまることの恐ろしさくらい政治家たるものは痛いほどわかっているはずなのに。政治家なら「感情論に陥る」とわかっている程度ならそれを無視すべきなのに。ましてや外交無能の政府なのだ。ましてや相手は海千山千の中国である。中国政府の巧妙な網に引っ掛かるバカ政治家,しかも閣僚が出て来てしまったわけである。お願いだから事業仕分と国税無駄遣い排除に集中してください,蓮舫さん。わが国の「領土問題」は北方領土と竹島しか存在しない。どうしていまだに政権内部でこんなことも徹底できていないのか。さっさと自滅してしまえ。
民主党の代表選なんかよりも,よっぽどこちらの問題のほうが私には恐ろしい。この中国漁船問題で反中世論が沸騰し,尖閣諸島の「領土問題」がかしましくなるかも知れない。でもそれは中国の思うツボであっても,日本にとって少しもよいことがない。反中は,反米と同じくなんの国益にもならない。中国脅威論は確かにある。ならどうするのか。国としての原則に立った上で中国との摩擦を最小限にしつつ,米国に加え,ロシアとうまく付き合うことではないだろうか。中国が日本の脅威になることで国益を損なう大国を増やすのである。どうも日本人は,日清・日露戦争以降,中国・ロシアに対して固定観念的拒否反応を身につけているが,そんなのは政治論理ではない。鳩山元首相はそのあたりの地政学的均衡(帝国主義的均衡)についてよく認識していたと思うと,彼が普天間問題などというつまらない事案で第一線から身を引かざるを得なくなって,私は本当に残念である。先日,彼はモスクワに外遊したが,これについて報道したメディアがまったくないのはどうしてなんだろうか。