今年の広島平和記念式典は,米国のルース駐日大使やパン・ギムン国連事務総長が出席し,注目を集めた。米国人が「これは謝罪を表明するものではない」とムキになって説明しているのが印象的であった。米国内では,退役軍人会を中心に「原爆投下が戦争を終結させ,多くの米国兵士の生命を救った。その歴史を書き換ようとするのに断固反対する」との声が主流である。6 割を占めているのだそうである。それでも,たった 6 割なのか,と私には意外であった。米国人もじつは心を痛めているのである。
21 世紀の悪の権化になったビン・ラディンが,いつだったか,潜伏先で密かに撮ったビデオのなかで,帝国主義的米国を非難するいつもの演説をぶっていた。そのなかで,米国への激しい非難に「ヒロシマ,ナガサキに原爆を落とした米国人よ,それで平然としていられる悪魔どもよ,神のご意思に従ってお前たちを地獄に送ってやる」というようなのがあったと私は記憶している。心が動いた。もちろん,アル・カーイダのテロリズムにはまったく共感できない。
卑劣な真珠湾攻撃をしかけた日本よ,アジアで残虐の限りを尽くした日本よ,原爆投下,大規模空襲はその報いだ,という意見もある。それはそれ。米国の報復と正義を装った無差別大量殺人についても,それ自体の非道は問われるべきである。