今日,仕事の都合で最終電車となった。くたくたというわけでもないが,電車で無性にバッハのチェンバロ協奏曲が聴きたくなった。帰宅して針を落としたのは,1979--1981 に独 ARCHIV PRODUKTION が録音した LP レコード。トレヴァー・ピノック,イングリシュ・コンサートによる演奏である: J. S. Bach — Die 13 Cembalokonzerte; Trevor Pinnock (Leitung, Cem), Kenneth Gilbert, Lars Ulrik Mortensen, Nicholas Kraemer (Cem), The English Concert; Aufnahmen: 1979--1981; ARCHIV PRODUKTION, 2723 077.
私のお気に入りは,Die konzerte für 1 Cembalo d-moll BWV 1052 と f-moll BWV 1056。ともにバッハ自身のヴァイリン協奏曲をアレンジしたものだという。トレヴァー・ピノックのこの盤は,古楽器を使ったバッハ・チェンバロ協奏曲の演奏として高い評判を取ったもっとも古い録音のひとつではないかと思う。それまでカール・リヒターの演奏が最上のものとされていたが,ピノックの登場でガラリとイメージが変わった。清冽,愉悦,軽やかさと深い通奏低音とが合わさったその音響は,「バッハの精神性」などというものに凝り固まった,それまでの埃っぽい重たい解釈を,きれいさっぱり吹き飛ばしてくれたのである。
ああ,バッハはいいなぁ。
私の所有する盤は 30 年前のドイツ・アルヒーフ輸入盤アナログ・レコードであり,もはやクラシック中古レコード店でしか入手できない。もちろん,この演奏は定番になっていて,いまでも CD で手に入る。
ユニバーサル ミュージック クラシック (2002-06-26)