OldSlav TODO, LaTeX 導入大会,クロマグロ問題

ルーマニアのとある学生の方から,OldSlav の要望をもらった。古ルーマニア教会文献の組版のために文字を二つ(: U+A65E, U+A65F — ↑のような形をした i — と Џ: U+040F, U+045F)追加してもらえないかというものだった。OldSlav・SlavTeX フォントはロシア正教会の文献組版用なので,広範囲で用いられた教会スラヴ語の文字をすべて収容しているわけではない。

ルーマニア語で書かれた何やら凄い教会スラヴ語文献(Gheorghe Mihăilă 著 "Dicţionar al limbii române vechi: sfîrşitul sec. X - începutul sec. XVI, Editura Enciclopedică Română, 1974")の巨大なデジカメ画像が添付されていて,くだんの文字に印が付いていた。次の版でなんとかしますと約束した。数少ない要望についてできそうなものは,いまのところ何でも聞き入れようと思っている。

この学生さんのメールは,ローマナイズされたロシア語で書かれていた。ルーマニアはその名のとおり古代ローマを継ぐ系譜がある。ルーマニア語もロマンス語系であって,ヒゲ(コンマ)を生やした S, T 文字,breve 等のアクセント記号を除けば,字面はラテン語に近い。しかしじつは,10 世紀以来長らく正教会の影響下にあり,文字はキリル文字が使われていた。近代になってローマ文化への回帰運動が起こり,文字はラテン文字が採用され現在に至っている。ルーマニア語にはスラヴ語からの借用語が極めて多いらしい。こんな歴史からして,ローマ人でありながらスラヴ訛が抜けなくなった強い個性がルーマニア人から湧いて来る。この学生さんも,ロシア語を書くに際してローマ人の文字で綴るなんて,ルーマニア語の歴史を象徴するようで,私にはじつに面白かった。

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昨年末に更新したばかりの LaTeX 環境を,インストールしまくっている。ある事情でいままた性懲りもなく。W32TeX + upTeX on Windows 7, upTeX + e-pTeX on Mac OS X, ptexlive 2009 on FreeBSD。いろいろ発見があって楽しい。ptexlive が早く babel 対応しないかな。

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ワシントン条約締約国会議において,なんとクロマグロ禁輸案が否決された(『クロマグロ:禁輸案を委員会が否決 ワシントン条約会議』)。この問題で,「もうマグロを食うのも半年に1回の贅沢になるかも」と私は諦めていたのに,9回裏で逆転大アーチ。日本の「政治力」が国際社会で通用した「信じられない」事件である(「経済力」も使ったんでしょうが)。

モナコなどの小国にへんな案を出されてしまうのを止めることこそが本当の外交力ではないかと思うのだが,しかし,外務省は頑張ってくれたんだと思う。日本は賢明にもアフリカ・中東諸国に働きかけた。趨勢が拮抗するのを見るや,中国,韓国までが反対に回ったこの図式。米国,EU の偽善者どもに対抗するためのよい例になるのではなかろうか。

そうは言っても,日本もここで米国や EU の理解の得られる提案をすべきではないだろうか。例えば,クロマグロなどの密猟・密輸をチェックする貿易ルールだとか,輸入量制限を自主的に行う,とか。そうでないと,思うに,「乱獲を正当化する野蛮国」のレッテルを貼られてしまう。とにかく,日本は海洋国家なのだから,政府には海洋資源の国際ルール策定において指導的役割を果たしてほしい。