メールで D. スミルノフから『弦楽四重奏のための La Divina Commedia』(2009)YouTube 動画の案内をもらった。この曲は,ドミトリ・スミルノフ,エレーナ・フィルソヴァ,アリサ・フィルソヴァがそれぞれダンテ・アリギエーリの『神曲』の地獄編,煉獄編,天国編に基づいて作曲したものである。先週 2 月 19 日にロンドン・キングズ・プレイスで開かれたダンテ弦楽四重奏団の演奏会 Russian Connections 3 での録音である。
ダンテの『神曲』は古来,絵画や音楽の源泉である。しかし音楽作品において,三部作全体を採り上げ,しかも弦楽四重奏として表現した例はないはずである。作品はスミルノフ・ファミリーによる共同という,各編において作曲者・性格の異なる三部作である。弦楽四重奏という古典的な形式が統一感をもたらしている。現代音楽の無調性はなかなか大規模形式になじまないと私は思っていたのだけど,この『La Divina Commedia』は,交響詩風の場面転換,地獄界から天上界へと上昇してゆくイメージを描いており,いくばくかロマンティックな音響を特色としている。現代無言オペラとでもいうような味わいがあって,素晴らしい。以下,動画を embed しておく。演奏はダンテ弦楽四重奏団(Krysia Osostowicz - violin, Giles Francis - violin, Judith Busbridge - viola, Bernard Gregor-Smith - cello)である。
INFERNO 地獄編(ドミトリ・スミルノフ作曲):"The Middle of Life", "Entrance to Inferno", "Francesca da Rimini", "The City of Dis", "9-th Circle", "Judecca" が好みである。
- 第一部
- 第二部
PURGATORIO 煉獄編(エレーナ・フィルソヴァ作曲):第二部冒頭のヴィオラのモノローグが印象的である。
- 第一部
- 第二部
PARADISO 天国編(アリサ・フィルソヴァ作曲):イントロダクションのロマンティックなメロディーと,終末の上昇するイメージが色彩豊かで愛らしい。