衆議院選挙が終わった。投票率は過去最高水準だったらしい。それだけ未曾有の関心のなか,民主党は歴史的ともいえる圧勝を果たした。幸福実現党なるにわか右翼政党は,三百うん十人の候補者を立てながら,結局ひとりの当選者も出せなかった。ここまで民主党が一人勝ちするとは誰も予想していなかったのではないか。
私自身は麻生さんの政策をそれなりに評価していた。この結果をみると,日本国民の総体は極めて手厳しい判断を下したと思う。この国がいまいったいなぜおかしくなってしまったのか,もういちど原点からやり直す — そういう厳しさを私のようなものでも感じる白黒はっきりした結果である。小泉元総理は規制緩和・改革推進の劇場政治において「自民党をぶっ潰す!」と旧態依然とした派閥政治に敵対したけれども,ここに来て,自民党は本当にぶっ潰されてしまった。小泉郵政選挙での自民党の大勝利,今回の民主党の歴史的圧勝は,じつは根本は同じなのかも知れないとへんな暗合を覚えてしまった。マスコミの愚劣な情報選択(政治の悪いところしか報道しない体質)に捕われない大きな波というものがあるものである。
日本の国民・有権者は総体としてじつに酷にして適確な選択をすると痛感した。ヘンな政党がひとりも当選しない,自民党だけでなく公明党も惨敗,他の野党は横ばい,となると,いかにこれまでの政治に愛想を尽かしていたか,いかに穏健かつ良識あるあたらしい政権を望み冷静に選択したか。民主党には感心しないことも多いけれども,民主党「だけ」を選択した日本国民に私は感動した。
なぜこれほどに思うところがあるのか。最近,ネットニュースをよく見るようになって,それに付く右傾化した浅はかなコメントのあまりの多さに,「衆愚性」という一語が印象づけられてしまっていたのだ。例えば,田母神論文へのクリックサーチ結果でも支持者が過半を占めていることに,いまの日本は確かに異常だ(はっきり言って「幼稚」 — なんとなれば,戦後の決意と世界への約束を「忘れる」という姿は「子供じみて」いるからだ)と本当に呆れたのである。しかし,この選挙結果をみると,そういう馬鹿者どもはじつはネットに多いだけだったのだと,少し安心したのだ。うじゃうじゃいそうで結局国民に相手にされなかった幸福実現党みたいなものかと。日本の有権者は健全である。
それでも民主党政権の不安は拭い切れない。外交,経済政策など,相当の混乱が予想される。混乱のさなかにやっぱり官僚依存が強まるような気がする。これまで野にいたのだから,ある程度脇が甘くてもしようがない。外国との約束はたとえ自民党政権が安請け合いしてしまったものでも,遵守しつつ国益に照らして改善して行くのがスジである。首を傾げさせるような対応は厳しく批判されるだろう。ま,選挙で選ばれたわけだから自信をもって仕切ってほしいと思う。(民主政権もダメで,公約は果たされず批判にさらされ党内分裂,新党ブーム。その果てに次の参議院選で自民が大勝,ヘンな政党が躍進しはじめ,一方でまたもやねじれ国会の再来,法審議は空転し,内閣不信任決議と内閣信任決議が繰り返されるだけの茶番化する国会 — これ,じつは私の描く,最悪にしてもっとも起こりそうに見えてしまうストーリーなんである。否,暗い思考はやめよう。)