9 月 11 日に宇宙航空研究開発機構(JAXA)が H2B ロケット打ち上げに成功し,さらに 18 日には「宇宙ステーション補給機(HTV)」1 号機の国際宇宙ステーションとのドッキングにも成功した。H2A の失敗から 15 年,JAXA は失敗を素晴らしい成功に転じた。このニュースは衆議院選挙の影に隠れて日本ではあまり騒がれなかったが,海外メディアも注目したという。私にはなにがどのようにスゴイのか皆目わからないのだが,宇宙ステーションへの物資運搬技術としてこれは画期的なことらしい(50 年ほども前に有人宇宙飛行を果たしたロシア,40 年も昔に月面に人類を送り込んだ米国の成果と比べ,H2B のなにが優れているのか,私には正直,さっぱりわからない)。個人的には,その少し前に,韓国がロシアと共同して計画したロケット打ち上げに失敗していたからなおさら,このニュースによって日本のロケット技術の優れた精度が印象づけられたように思う。
ロケットといえば,今年 4 月に北朝鮮が敢行したミサイル発射がすぐ思い浮かぶ。宇宙開発としてのロケットと兵器としてのミサイルは,技術的には同じというではないか。このとき北朝鮮はこれが「人工衛星」だと主張していた。つまり公式的には,今回の日本のロケット打ち上げと目的も見た目も変わらないわけである。とはいえ,北朝鮮の公式発表を額面どおり受入れた日本人は稀だろう。
面白いことに,北朝鮮は今回の日本のロケット打ち上げを「『宇宙空間での軍事的優位で軍事大国化を実現しようとする日本の犯罪的策動』と非難した」(『日本のロケット発射を非難=北朝鮮』)そうである。パンピー日本人である私には,H2B がいかなる傍系的意義においても「軍事目的」を有するとはとても思われないのだが,北朝鮮にはこのように見えてしまうらしい。じつは私は,北朝鮮のロケット打ち上げ, H2B 打ち上げともども,北朝鮮の見方が正しいのか私の印象が正しいのか確信をもって判断できない。ただ,日本のロケット技術が無視しえない「軍事的脅威」として周辺国の眼に映じていることは確かなようである。
何が言いたいのかって? こんなに平和な日本が軍事的脅威であるということ。平和目的の技術革新が周辺国を震え上がらせているとしたら,皮肉ではあるが,憲法に則った安全保障手段としてこれ以上のものはないではないか。勘繰り深い北朝鮮は日本がイスラエルのような隠れた核兵器保有国だとさえ思っているかも知れない。パンピーの私には実際のところはわかりませんけど。