なんと,栗本薫が

栗本薫が5月に亡くなっていたことを今日知って愕然とした。この多彩な資質を持つ天稟のストーリーテラーは,小説というものの物語性をいつも大事にしていた。私の大学時代の友人は,彼女の『グイン・サーガ』をいつも首を長くして待っては読み,讃歎していた。同時代の文学に心から共感できる仕合わせな人間だった。私にとって,栗本薫作品の筆頭は『ぼくらの時代』。

日本の近現代の作家には,物語を「拵えもの」と軽んずる傾向があった。要するに,文体に溺れた,貧弱な想像力が文学だと思っているところがあった。ワクワクするような物語,エンターテーメントを,子供が読むものとバカにしていたフシがあるのだ。栗本薫は,そんな蒼白いおエラいブンガク馬鹿,ゲイジュツ家を蹴散らして,文学を教養の煙幕にする似非知識人ではなく,本当に本を楽しむ読書人の支持を得ていたと思う。

あーあ。残念。