公的資金を受けて再建を目指す米 AIG 社が,幹部社員に巨額のボーナスを支給することで批判を浴びている。私はオバマ大統領が演説で怒りを露にしているニュースを見た。米国民も,自分たちの税金で支援される企業がその失敗の責任者である者に高額のボーナスを振る舞うなんてことを,道義的に許すはずがない。まったく「ふざけんな」である。
しかしながら,公的資金注入に際して,経営権の観点で米国政府がなんの留保も企業に対して行っていない以上,AIG としては,法律に違反しているわけでもなく,経営判断でボーナス支給するわけなのだし,誰からも非難される謂れはない,というのがスジだろう。AIG はこの状況にあって経営を立て直す戦略を持っているのだと思われる。私はここがアメリカという国の真面目・タフなところだと思わずにおれない。それが企業の自由というものである。いくら公的資金のオブリゲーションがあるといってもそれはそれ,経営は自分たちで決めるというわけである。政府からすると,新自由主義のなれの果てであるこの金融危機への対策が,皮肉にも,新自由主義の企業ポリシーによって応接されるはめになった,ともいえる。
ロシアでも昨年末の金融危機以来,国費で企業を支援している。そしてこの際,企業が政府の指定した人材を経営幹部に据えることを条件としている。こうして政府は経営権を握ることで,企業を国家の望む方向に従わせるわけである。その場合,AIG のような大盤振る舞いはおそらく難しいであろう。しかし,企業の活動が政府・国家権力の思惑に左右されるのが,国民にとって本当によいことなのかどうか。わからない。